act.4 そして、彼女の事情 6 | もしも君が迷ったなら

もしも君が迷ったなら

思いついた言葉を詩に。思いついたストーリーを小説に。

 ベンチに座り、気持ちを落ち着かせると、真由子は少しずつ話し始めた。
「あたしね、好きな人がいるの」
 突然の告白に、由美は驚きを隠せなかった。
「え? そうなの?」
 今まで恋愛の話をはぐらかされていたので、思わず聞き返す。すると真由子は照れたように頷いた。
「えっと……誰か聞いてもいいのかな?」
 真由子はしばらく迷っていたようだが、ようやく口を開く。
「……高村健太」
 まさかこうも簡単に教えてくれるとは思ってもみなかったので、由美は驚いた。しかしその名前は何となく予想していたものと同じだった。
「やっぱりそうだったんだ……」
「え?」
 由美の反応に驚いたのは真由子である。
「何となくそうじゃないかと思ってたんだ」
「え? 何で?」
 真由子が慌てている。実に彼女らしくない。
「だって委員長が絡むと、態度がおかしかったんだもん。木元さんを庇って怪我した時だって、『木元さんが怪我すればよかった』って言ってたでしょ?」
 見抜かれていたことを知り、真由子は恥ずかしさが込み上げてきた。
「そ、それは……ア、アヤ! 言葉のアヤよ」
 慌てて弁解する真由子に、由美は思わず笑った。
「な、何笑ってんのよ」
「ご、ごめん」
 ここで『かわいい』なんて言ったら、真由子はどんな反応するだろうか?
「もう隠さなくたっていいじゃない。委員長のこと、好きなんでしょ?」
 そう確かめると、頬を赤らめながら真由子が頷いた。 


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