ベンチに座り、気持ちを落ち着かせると、真由子は少しずつ話し始めた。
「あたしね、好きな人がいるの」
突然の告白に、由美は驚きを隠せなかった。
「え? そうなの?」
今まで恋愛の話をはぐらかされていたので、思わず聞き返す。すると真由子は照れたように頷いた。
「えっと……誰か聞いてもいいのかな?」
真由子はしばらく迷っていたようだが、ようやく口を開く。
「……高村健太」
まさかこうも簡単に教えてくれるとは思ってもみなかったので、由美は驚いた。しかしその名前は何となく予想していたものと同じだった。
「やっぱりそうだったんだ……」
「え?」
由美の反応に驚いたのは真由子である。
「何となくそうじゃないかと思ってたんだ」
「え? 何で?」
真由子が慌てている。実に彼女らしくない。
「だって委員長が絡むと、態度がおかしかったんだもん。木元さんを庇って怪我した時だって、『木元さんが怪我すればよかった』って言ってたでしょ?」
見抜かれていたことを知り、真由子は恥ずかしさが込み上げてきた。
「そ、それは……ア、アヤ! 言葉のアヤよ」
慌てて弁解する真由子に、由美は思わず笑った。
「な、何笑ってんのよ」
「ご、ごめん」
ここで『かわいい』なんて言ったら、真由子はどんな反応するだろうか?
「もう隠さなくたっていいじゃない。委員長のこと、好きなんでしょ?」
そう確かめると、頬を赤らめながら真由子が頷いた。