act.5 進行と逆行 6 | もしも君が迷ったなら

もしも君が迷ったなら

思いついた言葉を詩に。思いついたストーリーを小説に。

「優子?」
 突然俯いたままになってしまった幼馴染みに声をかける。しかし反応はない。
 また何かおかしな事でも考えているのだろうか?
 健太はこんな優子の姿を見るのが怖かった。
 どこかうつろな目をする彼女は、自分が知っている彼女じゃないようで、近寄りがたくなる。
 いつからこうなってしまったのか、健太はよく分かっている。
 それは、彼女の母親が彼女をかばって交通事故で亡くなった日からだ。
 何を考えているのかは分からない。だけどきっとよくないことだ。
 どうすれば彼女は、優子は前みたいに笑ってくれるのだろう?
 自分には、到底無理なのかもしれない。その術すら分からないのに、どうにかしたいなんておこがましいのかもしれない。
 それでも、それでもどうにかしたいって思うのは、彼女が、優子が好きだから。


web拍手 を送る