KANAE | フーテンひぐらし

フーテンひぐらし

永遠の放課後。文化祭前夜のテンションで生きたい。なかなか大人になれない。



木嶋佳苗の話に異様に食いつく女性たちが多い。



彼女についてはいろんな人がいろんな見解を述べているけど
結局女性たちの興味の根本はただ一点からスタートしている


彼女たちの言葉を借りれば



なぜあんなにデブでブスなのに男たちを手玉に取れたの?



ということだ


どうやらみんながそこの疑問からスタートして
彼女に興味を持っているのだ




でも私は言いたい
そのスタートそのものが違っていると



「スタイルがよくて顔がキレイな女がモテるはず」


いい加減この常識を捨てるべきだと思う



そりゃ確かにそういう人はモテるけど
それは合コンで一番人気だとか皆から憧れられるとか
何人もに告白されたとかそういう「表向き」の部分が分かりやすいだけで


ひとりの男をどハマりさせる
(しかも若くもなくイケメンでもない市井の男性たち)


というのは話が別だ



何度か書いたが 私の見てきた範囲では


異性はもとより同性もうらやむような

美人と美巨乳はわりと男に苦労していて
(有象無象が寄ってきてしまうわりに本命に恵まれない)


失礼ながら木嶋佳苗寄りなルックスの女性のほうが
次々と男が現れてとっとと結婚してたりする
(しかも男性の方がご執心だったりする)



最初は不思議な現象だなと思っていたが
あまりにそればっかなので
「どっちかっつとこっちがリアルな世の常なのか」と思いなおした



ある種の男には「安心感」や「嫁的な優しさ」が
「世でもてはやされる美しさ可愛さ」よりもよほど大事だし


女が忌み嫌う柔らかい「脂肪」の魅力と官能性を
男は想像以上に必要としているのだろう



現代の男たちはきっと
あがめたくなるような女神よりも
寄りかかりたくなるような母神がほしいのだ



聞けば彼女の声はたいそう可愛らしく、鈴を転がすような感じらしい。
また林真理子嬢の分析によれば、脂肪の乗った彼女のデコルテはかなり
キレイに違いないから、法廷でも胸元が開いた服をわざわざ着ていたのだろうと。



美人ではないかもしれないが
柔らかい脂肪を持ち
可愛らしい声を持ち
お菓子づくりなど分かりやすい女らしい趣味があり

ベッドでもいやらしい(これは彼女の証言から妄想しただけ)


なんと安心してくつろげてかつ劣情をもよおす女であることか。



横に美人がいても、彼女はきっと勝つだろう。
(なんの勝負かしらないが)



女を得たら

ひれ伏したいのでも周囲に自慢したいのでもない

安心してちょっと見くびりたくて癒されたくて

そんなものを大切に可愛がりたいのだ 男は




「美人なら、スタイルがいいならモテるのだ
 だからそれはしょうがないことだ


 デブでブスには私だって勝てるのだ」


女たちが思い込みたいそんな常識は
実はこの世のどこにもないと私は思う



それを証明し切った(証明しすぎてしまった)のが
木嶋佳苗なのだと思う



ただ
彼女が有罪だという前提において
何故男性たちを殺さねばならなかったのかに関しては
ひとつも分からない



私は彼女のルックスとテクに関しては全く興味がなく
むしろ「あのルックスなら次々と男が陥落するに違いない」と思っていた


だから私が気になることがあるとすれば
あの一見やさしそうな見た目の裏にもしかしたら
「黒い家」の菰田幸子みたいな闇があるのかもしれないということだ


利害や便宜で殺したのではなく
殺したかったから殺した というのが無いかどうか


それがもし匂えば、怖いと思う。



全然この事件とは関係ないのだけど、なんとなく
「脂肪という名の服を着て」という安野モヨコの名作を思い出した。



過食症で太っている女の子がダイエットを決心するお話だ。
暗い話。だが「細くて美人は上・デブでブスは下」という
女たち自身から出る強烈なヒエラルキーの意識が
この事件に反応する人々(裁いた人も含めて)の意識と共通するかんじ



何にせよ
犠牲になった男性たちは本当に気の毒だし
男から金を引き出して暮らすというのは
どんな場合でもずっと続けられるものではないのだな と





脂肪と言う名の服を着て 完全版
安野 モヨコ
祥伝社