メトロポリタン歌劇場の舞台を映画にしたのを見てきました。

3,500円。映画としては高いけど舞台よりは安い(笑)

創作をするようになって初めて見ると、これまで何となく感動していたのが、「感動させ方のわざ」が見えました。

ひと言で言うと、「対立」をうまく使っているということ。

高級娼婦が享楽の生活から真実の愛に目覚め、しかし男の父親の懇願により別れることを決意、事情を男に知らせず元の世界へ、そして……と話は続くんですが、3人の主要人物からして個性の違いが際立ち、古い伝統的な価値観(父親)と新しい自由主義的な価値観(恋人たち)と思想的背景も対比的です。

それより、今回気づいたのは(自覚的に捉えられたのは)、別れを決意する悲しい孤独な場面の直後に、にぎやかなパーティーの場面を置くこと。そして終盤、結核で死の床につく絶望的な場面の背景で、外からカーニバルの楽しげな喧噪が聞こえてくること。

最後に間に合った恋人と、謝罪にきた父親の前で、「ああ、痛みがなくなった。私は生きられるのね」とほほえんだ直後、ばったりと倒れて幕となること。

にぎやかさの中でこそ悲しみは引き立つ。観客をほっとさせた後でこそ驚きは引き立つ。

まさにセオリー通りに作られていることを確認しました。

 

しかし、そんな目で見ていると、感動が今までより薄くなってしまったような気が……(;´Д`)

泣きましたけどね。「泣けるオペラ」として有名ですからね。

ちなみに、原題は「ラ・トラヴィアータ」。道を踏み外した女、という意味だそうです。

ベルディーは、娼婦とか、道化師とか、迫害された民とか、弱い者の立場に立ったオペラをたくさん書いています。ぜひご覧になってください。