一つの選択連鎖

 

前回の独立時での話、

 

実はまだまだ続きがあるのです。


600人のポスティング会社の社長が言いました。


「君に当社のバイト600人を自由に使っていい。

彼らを生かして欲しい」…

 

ポスティングの仕事は歩合給なので、
とても安いのです。

 


ですから学生、主婦、お年寄りが多かったんですね。

 

体力を使う割には、
時間給にしたら300円から600円くらいでしたので、
みんな貧乏でした。

 

 

しかも、仕事がなければこの収入さえ発生しません。

 

 

ちなみに、ポスティング作業とは、

 

特に冬の時期になると、

大変な作業なんです。

 

初心者はポストに入れるたび、

 

爪の皮膚の部分が引っ掛かるので、

『ささくれ』で血だらけになるんですね。

 

手袋したら感覚がつかめない…

 

 

チラシに血が付いたらクレームになる…

 

 

よって、

 

皮膚が強くなるまで熟練者になるか、

指がなるべく掛からないように、

それぞれが、

横向きで手首をひねって入れる工夫とかしなくちゃいけないんです。

 

彼らの事を考えてました。

 

『彼らの仕事を増やすには、
ポスティング以外に何があるだろう…』

 

僕はチラシを配りながら

 

ずっと考えてました。

 

スタッフやバイトみんないい人ばかりで、
夕方出勤すると、
「おい新米、これ食え!」…って、
値引きされたパンや弁当などをたまにおごってくれました。

 

 

確かに僕は独立したてでしたが、
お金が無かったわけではありません。

 

 

前職ではトップセールスマンでしたから、
今まで貯まった貯金は1000万円以上ありました。
(※全て会社設立の為の準備金でしたが)

 

 

少なくとも彼らよりは金持だったと思います。

 

 

でも、
セールスマン時代は毎日ザルのようにお金を使ってましたが、
今は贅沢はできません。

 

 

会社の近くのひなびたお店が常連でしたが、
夕方になると売れ残りを狙って、
30円の食パンや150円の弁当をいつも食べてました。

 

 

 

アイディアのきっかけ

 

 

 

ある日の夕方、
チラシを都営住宅で撒いている時に、
お婆ちゃんがたくさんの買い物袋を持って、
階段を登る所に出くわしました。

 

 

昔の団地ですから、

 

エレベーターなんかありません。

 

「いつもご苦労様ですねぇ」…

 

と声を掛けられました。

 

普通ならゴミになるチラシだから、

 

僕らは文句言われてもいいはずなのに。

 

この会社のポスティング業務は、
他の業者と違って、
マンションや団地などの集合住宅であっても、

 

下のポストに入れる楽なやり方ではなく、
わざわざ階段を上って、
各戸のドアポストに入れるのが『売り』になってました。

 

この方がずっと反響が高いからです。

 

 

しかも、

新聞折り込みよりも安い上に、

数倍の反響がありました。

 

そこで、
こちらもチラシを持って階段を上るついでなので、
『その袋、持ってあげましょうか?』…と声を掛けました。

 

 

お婆ちゃんはとても喜び、
「あら、すいませんねぇ、助かるわぁ…」と。

 

 

最上階の5階の住まいまで運ぶと、
「あなた、ちょっと待ってて」と、袋の中をゴソゴソかき回して、
お汁粉を一缶差し出しました。

 

 

遠慮しましたが、
「今日は飲み物が安かったから買い過ぎちゃって…。

 

助かったわ。」

 

本当に嬉しそうでした。

 

 

 

その時、

 

 


これだ!!!

 

と思いました。

 

 


もう気付かれたと思いますが、
そうです…

 

 

日本で初の

 

『買い物代行業』です。

 

 

早速会社に戻って社長と相談しました。

 

 

 

「本井君!これはいけるぞ!!」

 

 

このポスティング会社は、

 

チラシの印刷も行なっていたんですね。


新聞折り込みが中心でしたので、
どこの店が安いか、
またはどこでバーゲンをやっているか…

等が配布前に分かるんです。

 

それをフルに利用して、
お米・ビール・醤油・牛乳・トイレットペーパー・家具など、
重いものからかさばるものまで、
地域で一番安いメーカー商品を探して、

 

 

『玄関先までお届けします!』

 

…ってやったんです。

 

 

一般の方はチラシが配られるまで、
バーゲンはどこでやるか分かりません。

 

 

もし隣の町なら、
バスを使ってまでも買い物する人もいると聞きます。

 

 

どんなに遠くても、

 

複数のスーパーを掛け持ちしながら、

同じ商品でも一番安く売ってる商品を、

代行して買って来て、
依頼主の玄関先まで届けるわけですから、
主婦の方や、

時間が合わなくてバーゲンに行けないOLなど、
申し込みが殺到しました。

 

戴く『買い物代行手数料』は、
買い物代金の10%か、500円のいずれか高い金額。

 


会社はとても忙しくなったと同時に、
僕の会社もその後に法人登記して、

かなり忙しくなったので、
これを機にこの会社のバイトを辞めました。

 

 

転落の始まり

 

 

 

その後、、
乗用車持ちこみのバイトを募集したり、
赤帽と契約したりして、
どんどんこの会社の新事業は大きくなりました。

 

 

社長はお店と結託して、
バーゲン品以外の商品を買った場合は

 

バックマージンまで取りました。

 

その内、倉庫まで建てて、
お米や醤油、味噌、トイレットペーパーなどの、

 

生活必需品を中心とした、

売れ筋商品の在庫まで抱えるようになりました。

大量に買えば当然、安くなるからです。

 

次第に、
自社独自のバーゲンまでやるようになりました。

 

 

今の時代と違って、

 

インターネットもなかったし、

宅配便もかなり高かったんですね。

 

だから、

 

かなり儲かったようです。。

 

 


ある日、その社長から久々に電話がありました。

 

 

 

「本井君、今度テレビに出るんだ。
今までも

 

週刊誌や新聞社からの取材で大わらわだったんだけど、
NHKニュースや民放からも取材要請が来ていて、

特集も組まれる。
ところで来週、この事業説明会があるんだけど、
君、時間があったら来ないか?」

 


僕は生返事で、
『良かったですね。時間があったら行きますね。。』
と応えました。

 

 

自分の会社の事業が忙しくなったせいもありましたが、
何となく不安な予感がして、
社員の一人に行かせる事にしました。

 

 


その社員が夜会社に戻り、

 

報告を聞いてビックリ!

 

「本井社長、大変でしたよ!
会場に着いたら、
「なぜ本井さんが来ないんだ!」と怒鳴られてしまいました。
説明会の紙をもらったら、
なんと、

 

本井さんの名前がメイン講師になっているじゃないですか!」

 

その紙を見ると、
『買い物代行 発案者:本井秀定氏
たった300万円の投資で、地域代理店に!」

 

 

・・・

 

 

空いた口が塞がりませんでした。

 

 

しかもこの会社、
自社で近隣だけ行なっていれば良かったのですが、
全国に代理店を募集し始めたのです。

 

 

しかも、
地図上で区分けされた各地域で営業する「権利」を、

 

なんと、300万円で…

 

営業のやり方は指導するとの事ですが、
地図上の権利だけの販売ですから、

 

その会社の元手は『ゼロ』です。


僕に言わせれば、

『バーチャル』…つまり仮想の世界です。

 

 

 

おる日、その社長から、
鼻息の荒い声で電話がありました。

 

全国から問い合わせが殺到し、

 

数億円の自宅を建てたとの事。


そして、

僕と仲の良かった社員やバイトは全員辞めていました。

 

社長は自慢します。

 

 

「仏壇なんか、

 

ボタンで扉が開閉するんだよ。

仏壇だけで600万円かかったんだ。」

 

・・・

 

 

これは破綻する…

 

 

そう直感的に思いました。

 

 

今まで僕は三度、就職先の会社の倒産を経験しましたが、
これは無駄ではなかったと思います。

 

 

なぜならわずか20代で、
『倒産のパターン』を実体験で学んだからです。

 

 

この会社もその倒産のパターンの一つでした。

 

 

その後、

その社長とは一切連絡を取っていませんが、
当時(26年前)の風の噂では、
やはり倒産してしまい、

社長は逃げてしまって行方不明だそうです。

 


『実れば実るほど、

 

頭(こうべ)を垂れる

稲穂かな』…

 

 

 

絶対に潰れない会社を作る…

 

 

 

 

当時、そう強く思ったことを覚えています。

 

 

 


あっ!!!

 

 

 

また本題を忘れた…!

 

いつか必ず書きますね…

 

『奇跡の話』はいっぱいありますからお楽しみに。