ビジネスは流れに乗る事


26年前、
独立した会社はテープ教材を作る企画会社でした。

 

そうです、
最初の就職先である東○○販時代に、
口下手でどうしようもなかった私を救ってくれた、
様々な「カセットテープ」の企画を中心とする事業でした。

 

(※後日お話しします)

 

別に意識していたわけでもありませんが、
なぜかこの事業が中心となりました。

 

 

大脳生理学に基づき、
過食習慣を改善する「スリム○ャッ○」が爆発的に売れ、
週刊誌やテレビのニュース番組にも紹介されました。

 

 

当時はまだ、
「α波」が野菜の「アルファルファ」と間違えられた時代でした。

 

 

自律訓練法の第一人者といわれる
ドイツのシュルツ博士の愛弟子といわれた、
著名な池見酉次郎先生も協力してくれました。

 

 

池見先生は九州大学で始めて「心療内科」を発足し、
全国の病院や学界で

 

「心」の重要性を説かれ普及された方です。

 

「人間は物質である」と捉える西洋医学に、
初めて「心」に焦点を当てた、偉大なる方でした。

 

 

電話口で池見先生はこう言いました。

 

 

 

「本井君、

 

 

もっともっと心に関する教材を作ってくれたまえ。
人間-(マイナス)肉体=0ではないんだよ。
実は、
目に見えない心が主体で、

肉体はその道具でしかないんだ。
それが分らない限り、

病気はなくならない・・・」

 

 

僕はその後、
頭に乗って「育毛カセット」やら
「愛の成功術・恋愛成就カセット」「身長促進カセット」などの
怪しげなテープ教材も作りまくりました(笑)。

 

 

 

全部で30種類くらいはあったかと思います。

 

 

またこの事業は、
様々な新刊本を出す出版社とのタイアップ方式により、
そのつど出版記念講演会を催して、
著者にその本の内容を語ってもらう・・・という
「カセットブック」というジャンルを全国書店に設置するまで発展しました。

 


本が並んでいるんだから、音も並べよう・・・

という単純な発想からでした。


ビジネスマンは

たくさんの本を読まなければなりません。


しかし、

1冊全部読むには優に4時間はかかります。


でも、その本を書いた著者の講演会カセットなら、
1時間~2時間程度の時間で、

どこが一番大切なエキスなのかも分かります。

 

その本の内容のエキスが、
車の中や、

 

混雑した電車の中でもウォークマン一つあれば聴けるのです。

 

テレビのニュース番組にも紹介され、
一大ブームとなりました。

 

 

各出版社から問い合わせが殺到し、
その制作まで請け負うことになりました。

 

 

明○香出版社、P○P、朝○出版社、角○出版、新○社・・・など、
多くの出版社から問い合わせが入り、大変な忙しさでした。

 

 


その頃から、
毎朝起きるたびに音楽が聞こえ始めました。

 


過去に聴いたことがある音楽がほとんどでしたが、
稀に今まで聴いたことのない曲もありました。

 

そこで、
「α波ミュージック」もシリーズで出版して、

 

これも大ヒットしました。

 


翌年の29歳に
「日本教育システムセンター」という社名で法人登記しました。

 

 

英語で言えば、
「Japan Education System‐center」ですね。

 

※実は長ったらしい社名なので、
単純に頭文字を取って今の「JES」を作りました。

(安易だぁ~)


何の目的も志もなかった僕が、
ただ流れに乗るだけで

とんとん拍子に事が進んだのです。

 

 

落とし穴

 

 

 

いろんな問い合わせがある中で、

 

通販会社で

「○○ビューティ」という会社から問い合わせがありました。


年商20億円ほどの売り上げですから、
当社にとってみればかなり大きな会社です。

 

ワンマン社長で名高いS社長から、
直々、「痩せるための教材を作りたい」・・・との電話が入りました。

 


実際に会ってみて、
とても気さくで人情味の厚い社長で、
個性は強かったですが、

僕は「やり手の社長」として尊敬してました。


「本井さんは、まだまだ若いのに、いいセンス持っているね。
君はこれからどんどん伸びるよ」…と、
多少なりともS社長は僕を認めてくれていました。

 


その教材は既に「スリム○ャッ○」で基本はできてましたから、
企画料はほとんどサービスで、
制作費だけの見積もりを書きました。

 

 

声優代、スタジオ代、教材印刷代、ダビング代、ラベル代…
商品の制作は取り敢えず2,000セットの製造、
しめて850万円くらいの売り上げでしたから、
当時としてはかなり大きな仕事でした。

 

 

ただし、
支払いは納品した月の2カ月後です。

 


そして無事納品を終え、

担当者からその売り上げも好調だとの報告を受け、
ホッと胸をなでおろしました。

 

 

そして、入金予定日の3日前、
いつものように会社に出勤しました。

 

 

 

すると、社員の一人が血相を変えながら、

 


「しゃ、社長、大変です!

今朝の新聞に!!」

 

顔面蒼白になって、
新聞を片手に事務所になだれ込んできました。

 

 

その新聞を受け取ると、
「○○ビューティ倒産」の文字が…!

 

 

ま、ま、まさか!…

 

 

支払いを待ってもらった業者に支払う事ができなくなれば、
信用も一気に失い、当社も破綻します。

 

 

『倒産』の2文字が脳裏をかすめました。

 

 

またか…

 

 

就職した会社が矢継ぎ早に倒産し、
『絶対に潰れない会社を作る!』と独立したのに、
今度は自分の作った会社が倒産するのか…

 

 

しかもまだ独立して数カ月しか経ってないのに…

 

 

どこまで俺は運が悪いのだろう…

 

 

新聞を手に足がガクガク震え、
立っているのが精いっぱいでした。

 

 

 

でも不思議と、
S社長の事を恨む気持ちはありませんでした。

 

 

 

むしろ、やばい人との取引もあったようなので、
身の安全を祈ってました。

 

 

僕は倒産した事よりも、
S社長の身の安否を

 

心配していたんです。


社員に促され、

取り敢えず倒産した会社に向かいました。

 

業者やマスコミと思われる人ゴミが、

 

会社の玄関先に立ち往生しています。

 

人垣を押しのけ、
玄関に貼られている1枚の紙を読みました。

 

 

『株式会社○○ビューティは、

 

○月○日をもって取引停止となりました。
今後の連絡先は下記の弁護士に…』

 

S社長の名前も書いてありました。

 


横にいた業者の一人と思われる人に、
『S社長はどこにいるんですか?』と聞きました。


「自宅もモヌケの殻らしいので、

どこかに逃げたんじゃないですか…」

 


意識が茫然としたまま会社に戻りました。

 

 

社員は、
「ひどい社長だ!あれだけサービスしてあげたのに…」
とか、
「確か、

 

『私は絶対に人を裏切らない…』って言ってましたよね、

あのタヌキ親父!」…とか。


僕は

最初から騙されたのかもしれない…


なぜなら、
「倒産するかもしれない」…ってこと、
S社長自身が分からないわけがないからです。

 

でもここで諦めるわけにはいきません。

 

 

数多くの仕入れ業者が関わってますから、
1件1件、電話をかけて、
『こういう事情なので、もう少し待って欲しい』…

 

と泣きつきました。

 

数万円単位の業者は、
「しょうがありませんね…」と納得してくれましたが、
中には、
『そんなの関係ない!当社はお宅との取引なんだから、
何が何でも払ってもらう!当社も大変なんだ!』…と。

 

 

そりゃそうです。

 


どこも大変な時に、
できたてのほやほやの当社を信用してくれたんですから…

 

それでも、
お客のところに回り、
『今度のお支払いを早めに振り込んでもらえないか…』

 

と頭を下げに行きました。

 

お客はどこも中堅もしくは大きな会社でしたが、
大きな会社ほど、
「そんなお金の用立てもできない危ない会社だったの?
だったら今後は取引できないね…」と、
反対に脅されました。

 

 

 

奇跡が起きた!

 

 

 

3日後、
『もう、だめかも…』
そう思っていたところ、
銀行に記帳に行った経理の社員が、
血相を変えて会社に戻ってきました。

 

 

他のお客様からの入金をチェックするためでした。

 

 

『少額だけど、一部金だけでも支払おう…』

 

と思っていたからです。

 

経理は戻るなり、

 


「社、社長…大変です…」

 

 

かぼそい声で僕の顔をじっと見ています。

 

 

 

まだ、悪い連鎖が続くのか…

 

 

通帳を渡され、残高をみると、
なんと、
1000万円近くのお金があります!!!

 

 

 

えっ???

 

 

 


『S』さんの名前で、

 

ちょうど600万円の入金があったのです。

 

一瞬、

 

この「S」という人がいったい誰だか思い出せませんでしたが、
そうです、
あの倒産した○○ビューティの『S社長』の個人名でした。

 

しかも、倒産した3日後に…

 

 

現在逃げ回っているはずのS社長が、
ちゃんと個人名で振り込んでくれたのです!!!

 

 

これだけあれば、
業者への支払い、

 

そして社員の給料も家賃も支払う事ができます。

 

 

それから1ヶ月ほど経ち、

 

 

破産の説明会にS社長が現れ顔を見せましたが、
経由は全て弁護士が説明し、
S社長は終始無言で頭を下げるだけでした。

 

僕は債権者の中で、
S社長は僕が前列に座っているのを分かっていたはずなのに、
一度も僕の顔を見ませんでした。

 

 

よって、
お礼の言葉も掛けられない状況で、

 

債権者会議は終了しました。。

 

 


倒産した後に、
その会社の社長から入金があった…

 

 

 

普通じゃ有り得ない奇跡的な話です。

 


S社長の会社は倒産してしまいましたが、
僕は今でもそのS社長のことを尊敬しています。

 

奇跡は

 

『諦めと信頼』によって

引き起こされるのかもしれません。

 

『諦め』はイコール、「期待しない事」…

 


期待は、全てとは言いませんが、
『執着や恨み、憎しみ』などの闇に繋がりやすいんです。

 

そういった地下の波動からは

 

絶対に奇跡というものは起きません。

 

 

そして『信頼』とはイコール、「信じ切る事」…

 

 


期待とはちょっと意味が違うんですね。

 

ビジネスにおける『儲ける』という字も、
「信じ合う者同士が寄り添っている姿」を表しています。

 

 

『信頼』の「頼る」という字は、
客だからとか業者だからといった上下など無く、
同じ人間として、
一心同体のように寄り添っている関係の事を言うんです。

 

 

 

相手に対して

 

 

過信な期待を持つのでは無く、
相手を信じて

寄り添う気持ち…

 

 


そしてそれから1年ほど経って、
当時の担当者Yさんから電話がありました。

 

 

 

Yさんが告白しました。

 

 

「S社長は倒産する数日前に

 

本井さんの会社を心配してたよ。
『彼はきっと大きくなるから、

今、僕の手で潰す訳にはいかない』…ってね」

 

そしてS社長は、
前々から悪どい業者には1銭も払わない方針だったらしいです。

 

 

だから会社も大きくなりましたが、
反対にいろんな人から恨まれていたようです。

 

 

 

でも、
『人は自分の鏡』なんですね。

 

 


僕が当時、倒産したことよりも、
S社長の身の安否を心配したのと同じように、
S社長も僕の事を心配してくれていたんです。

 

だから僕はこのことを、
『寄り添いの法則』と呼んでいます。

 


だから『人』という字も寄り添っているでしょ?


人間は一人では生きられないから、
寄り添ってみんな生きてるんですね。


どんなに人から危害を加えられても、妨害されても、
良くない不幸が万一訪れても、
それを心の底で理解できるかどうかで、
人への見方が変わるし、感謝の気持ちも起きるし、
奇跡も起きるんだと思います。


しかもこの奇跡は1回だけじゃないんです。


会社を作って26年間、
何度もこの奇跡は起きて助けられているんですね。

 

でなかったらとっくにこの会社は潰れてます(笑)。

 

 

だから『寄り添いの法則』は本当にあるんだと、
僕は心からそう思って、

 

実際にそうしてます。