卵子が取れない空胞の原因は、また取れやすくする効果的な対策は | 両角 和人(生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療専門医の立場から不妊治療、体外受精、腹腔鏡手術について説明します。また最新の生殖医療の話題や情報を、文献を元に提供します。銀座のレストランやハワイ情報も書いてます。

採卵しても卵子が回収できないケースがあります。
せっかくとれると思い採卵に臨んだにも拘らず取れないとかなりショックだと思います。

取れない原因として、現在のエコーの解析度では卵子自身が見えていない事が最大の理由となります。
採卵で卵子がとれるのは卵胞液を吸引するとその結果として卵子が回収できるわけで、決して卵子を見ながら採卵しているわけではありません。

大体8割程度は回収できますが、体質もあり、どうしても取れにくい方がいる事も事実です。
特に年齢が上がるとその傾向は高くなります。

卵子の回収率を上げる工夫ですが、以下の点がポイントになります。

①卵胞液を出来るだけ残さず吸引する。
採卵の手技が雑だと起こりえる事です。卵胞液の最後の数滴に卵子がある事もあります。出来るだけ吸い残しがないようにしっかりと採卵をする事が必須です。

②トリガーはスプレーだけではなくhCGも併用する(ダブルトリガー)
スプレキュアなどのスプレーのみだと効き目が弱いケースがあります。鼻粘膜からの吸収となるため体質や、その時の体調にも左右されます。これを無くすために、hCGの注射を併用する事が対策として有効です。特に最近ではリコンビナントのhCGであるオビドレルが発売されており、ばらつきがなく効果が安定しているため非常に有効です。

③卵胞内の洗浄を行う(卵胞洗浄)
卵子が卵胞壁から剥がれないケースに対しては、卵胞洗浄と言って卵胞内を洗う事が一つの対策となります。これにより水圧を用いて卵子を剥がす事で取れにくい方でもとれる可能性が高くなります。ただ卵胞洗浄をしても絶対にとれるわけではありません。

④トリガーの時間を早くする
トリガーの時間を2時間程度早くする事も回収率を上げるためにはお勧めです。
なお、あまり早くすると排卵する事になるため注意が必要です。


以下以前空胞に関して掲載した記事を再度掲載します。

採卵したけれど卵子が取れない場合に「空胞でした」、と言われたことがあるかと思います。

空胞というケースがどれだけあるのか、その理由は、改善方法はあるのか、本当は卵子があったのでは、など色々疑問があるかと思います。

基本的にエコーで卵胞が育っており、E2が上昇していれば卵子はあると思います。
ただそれがうまく卵胞の壁から剥がれなくて、その結果として採卵針に卵子を吸引できなかった事が空胞の理由になるかと思います。
これは体質も関係しており、空胞を繰り返す方が多いということも事実です。

過去の記事(採卵したけど空だった )も参考にしていただけたらと思いますが、採卵の前に行う点鼻薬が合わないケースが多いかと思います。

スプレーが合わない際にはhCGの注射に切り替えると空胞が防げるケースもあります。

使用したhCGに問題があって効き目が悪かったことも考えられます。
その場合には、次回は違うバッチのhCGを用いる事が対策となり得ます。

いろいろ工夫しても、どうしても壁から剥がれにくい場合には卵胞洗浄で対応する方法 もあります。

ただ、そもそも卵子が卵胞の壁から剥がれない事はどなたにでも起こりえますので、一つの卵胞を育てていくことはどうしても空胞になりやすいということになります。

そういった意味でも排卵誘発を行い、ある程度たくさん卵胞を作ることで、一つ、二つ取れなくても、その他で取れれば、トータルで問題ない治療ができるという意味合いもあります。