顕微授精でも受精しないのはどうしてか?またどうしたら良いか? | 両角 和人(生殖医療専門医)のブログ

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44歳です。顕微授精をしていますが、3回続けて受精しないのは年齢のせいでしょうか?

このようなご質問がありましたのでお答えします。

顕微授精での受精率は大体8割です。これは年齢を問わずおおよそこの数字です。
ただ年齢がかなり高くなると受精率が低下する事は事実としてあります。

ただ3回続けて受精しないとなると、施設の治療方針や、培養室の技術的な問題があるかもしれません。

受精しない原因は、①卵子側にある、②精子側にある、③卵子と精子の両方にある事考えられます。以下精子側についての説明をします。
 A)活性化因子の不足:精子が卵子活性化因子の不足または欠如が考えられます。つまり精子が卵内に入ると卵子を活性化して受精させます。その活性化させる物質が足りない、またはもっていない事が考えられます。
 B)精子頭部の脱凝縮の異常:精子の頭部はDNA情報がコンパクトに収められています。つまり固く凝縮されています。精子が卵内に入ると精子の頭部は凝縮がとけて膨らみます。これを脱凝縮と呼びます。何らかの原因でこの脱凝縮が出来ないケースがあります。これにより受精が障害されます。

顕微授精をして受精しない場合には基本的に次回からは活性化処理を行います。
具体的にはカルシウムイオノフォア処理を行います。活性化処理を行うと受精障害の場合にはほとんど受精させる事ができます。なおこの方法は安全性が証明されています。

また顕微授精をには2種類あり、通常の顕微授精とピエゾICSIがあります。ピエゾICSIは卵子への負担が最大限減らす事ができて変性率も少なく、精子の不動化処理も確実に行えるためより受精率が高くなります。そのため通常の顕微授精で受精しない場合にはピエゾICSIを行います。

また採卵数が少ないとこの様な受精しない卵子のカバーができなくなります。そのためできるだけ複数の卵子をとれる様に刺激を工夫する事も大切と言えます。

もし何も改善策をとっていない場合にはこの様な対策をとると良いかと思います。