1つの正常胚を得るために採卵を何回行う必要があるか? | 両角 和人(生殖医療専門医)のブログ

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前回の論文の続きになります。
 
このグラフは反復流産PRLと反復着床障害RIFの群で胚の染色体の内訳を示しています。両群に於いて割合に差は認められませんでした。

青は正常胚、赤はトリソミー、灰色はダブルトリソミー、オレンジはモノソミー、水色はその他を示しています。

モザイク胚もある事を踏まえると少し判断は難しくなりますが、両群で青の正常胚は3割前後という事が分かります。

 
 
 
このグラフは反復流産PRLと反復着床障害RIFの場合で年齢別の正常胚の割合と1つの正常胚を得るために採卵を何回行うかを年齢別に示しています。
 
左のグラフは年齢毎の正常胚の割合を示しています。35-36歳の場合は正常胚の割合が5割前後とかなり高い事がわかりますが、年齢が上がるとその割合はかなり低くなり41-42歳では1割以下になる事がわかります。
 
右のグラフは何回採卵すると1つ以上の正常胚が出来るかを示しています。
35-36歳の場合はすぐ正常胚が出来る事に対して、年齢が上がると中々出来ないことが分かります。
例えば反復着床障害の37-38歳の場合2回の採卵で正常胚ができます。
反復着床障害の39-40 歳の場合5回採卵しないと正常胚が出来ず、41-42才になると9回採卵しないと正常胚が出来ないことがわかります。

 
これらの結果から言えることとして、これらの結果はとても有意義なデータで、臨床上とても参考にできるデータです。年齢毎に具体的な細かい数字が記載されております。
ただモザイクの取り扱いはどの様にしているのか、モザイクの程度はどう判断しているのか、また前回の記事にも書きましたが症例数が少ない事、そしてNGSではない事などで今後の結果はまた変わる可能性はあります
何れにしても日本国内の貴重なデータであることには変わりなく、今後行われる大規模な追加の臨床研究の結果が出るまではこの結果を元に正しい情報を伝え臨床を行うことが大切だと思います。
 
Human Reproduction, Vol.34, No.12, pp. 2340–2349, 2019
Preimplantation genetic testing for aneuploidy: a comparison of live birth rates in patients with recurrent pregnancy loss due to embryonic aneuploidy or recurrent implantation failure