卵管造影検査は痛い方が妊娠する | 両角 和人(生殖医療専門医)のブログ

両角 和人(生殖医療専門医)のブログ

生殖医療専門医の立場から不妊治療、体外受精、腹腔鏡手術について説明します。また最新の生殖医療の話題や情報を、文献を元に提供します。銀座のレストランやハワイ情報も書いてます。


卵管造影検査は痛い方が妊娠するのでは?
このように考えている方がいます。
痛いと狭い所があり、それが造影剤で通りが良くなったから、と言う考えです。
今回これに関して調べている論文がありましたので紹介します。

卵管造影検査に用いる造影剤には脂溶性と水溶性の2種類があります。
脂溶性は以前から用いられており、水溶性は近年多く用いられています。脂溶性造影剤はヨードが含まれており甲状腺機能に影響するのでは?と言う指摘があります。

この研究では脂溶性と水溶性のどちらが妊娠するか、また痛みと妊娠率はどの様に相関するか、造影剤の用いた量は妊娠率に影響するか、など興味深いところを調べています。
これらの疑問のいずれも我々臨床医は大体は理解していますが、具体的なエビデンスを知りたい箇所です。この論文では卵管造影検査後半年に於ける妊娠率を調べています。
以下に論文の要点を記載します。

この表は脂溶性造影剤と水溶性造影剤で痛みの程度によりその後の妊娠率はどうなるかを調べています。
縦軸は痛みのスコアを示すVASです。値が高いと痛みが強くなります。下の二列の箇所で脂溶性造影剤で痛みのスコアが5以下と6以上で比較すると28.8 vs 49.4で痛みが強い方が妊娠率が高い事が分かります。
また一番下の列で痛みのスコアが6以上の場合で脂溶性造影剤と水溶性造影剤で比較すると妊娠率は49.4 vs 29.6で脂溶性の方が1.7倍高くなる事がわかります。


この表は脂溶性、水溶性に於いて使用した量による妊娠率を示しています。
一番下の8.3ml以上に於いて脂溶性と水溶性を比べると脂溶性の方が1.9倍妊娠している事が分かります。

この結果から言える事として
卵管造影検査は痛い事で有名な検査ですが、狭い所を通す為ある程度の痛みは避けられず、その結果妊娠率が上がる事になります。
勿論医師はなるべく痛く無いように検査を行いその結果妊娠率高くなれば好ましいですが、卵管を通すためにある程度の量の造影剤を用いる事が必要なのかと思います。

Human Reproduction, Vol.34, No.12, pp. 2391–2398, 2019
Treatment effect of oil-based contrast is related to experienced pain at HSG: a post-hoc analysis of the randomised H2Oil study