刺激の結果エストロゲン値が高いと子供に影響するか? | 両角 和人(生殖医療専門医)のブログ

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卵巣刺激によりエストロゲン値が高いと卵子の質が下がり子供に影響するか?と言う論文です。今年2月にHuman reproductionに掲載されました。

自然周期の場合トリガーの日のエストロゲン値は300程度です。その一方で刺激をするとトリガーの日のエストロゲン値は高くなり卵胞一つあたり250〜300くらいとなるため例えば7個採卵する際には2000近くまで上がります。この論文ではこの様な高いエストロゲンレベルが生まれてくる子供に影響するかどうかを調べています。

 自然の方が良い卵子が出来るとか、刺激すると卵子の質が低下するとか、その様に言う医師もいますが、この論文では卵巣刺激をして血液中のエストロゲン値が高いとどの様な影響を卵子や生まれてくる子供に与えるかを調べています。

 
この表はトリガー時のエストロゲン値と生まれる子の相関を示しています。
 E2は以下の6郡に分けています。
<1000, 1000–1999, 2000–2999, 3000–3999, 4000–4999 , ≥5000 pg/mL.
この6群に於いて出生体重、低出生体重、分娩週数などに有意差を認めませんでした。
 
この表のAはエストロゲンレベルにより出生体重には差がないことを示しています。表のCはエストロゲンレベルにより低出生体重には差がないことを示しています。

この結果から言える事として、排卵誘発で卵巣刺激をしたとしても卵子の質が低下したり、また子供の生まれてくる体重やその後の予後に影響することは無いとしています。
つまり刺激をすると卵子の質が低下する事は根拠がない事になります。
この様なエビデンスを元に正しい最新の情報を提供することが必要だと言えるかと思います。
 
Human Reproduction, Vol.35, No.2, pp. 424–433, 2020
Association between peak serum estradiol level during controlled ovarian stimulation and neonatal birthweight in freeze-all cycles: a retrospective study of 8501 singleton live births