卵巣嚢腫手術と卵子温存
20代前半等の未婚の時卵巣嚢腫が見つかった場合どうすればよいか?
担当の先生から以下のように言われるかもしれません。
「オペをしないと卵巣嚢腫が破裂する恐れがあります」
「今後もしかしらら癌になる恐れもあります」
「大きくなるとオペが大変ですよ」
「放置しておくと更に症状がひどくなります」
これはどれも一理あります。
破裂したら痛くなり大変です。
もちろん癌は言うまでもなく大問題です。
更に大きくなると色々症状も出てきます。
卵巣嚢腫がある程度の大きさになっていれば、オペをする事は妥当だと思います。
4㎝を超える卵巣嚢腫がある場合はオペの適応になり得ます。
ただ、今後妊、娠出産をしなければいけない女性にとって、こういった事と同じくらい大切な事があり、それは卵子を残しておく事です。
卵巣嚢腫は手術で取って無事に治りました。
しかし同時に卵巣も殆どとられて卵子も無くなってしまいました。
これでは大きな問題となります。
卵巣嚢腫の手術をした女性のAMHが低下している事は過去の記事 でも紹介しました。
特に両側の嚢腫の場合は閉経年齢が早くなる事も過去に紹介 しました。
産婦人科の手術には2種類あり
①腫瘍の手術
②リプロダクティブな手術
以下はあくまで私の個人的な意見ですが、、、(そう思わない先生もいると思います)
腫瘍専門の医師は、卵巣嚢腫の治療に対して腫瘍の再発や癌化を防ぐ事に最も重きを置きます。
生殖医療専門の医師が卵巣嚢腫の治療をする場合には卵巣機能の低下を防ぐ事に対して最も重きを置きます。
つまりこの二つのオペはある意味、相反する事をしています。
これはかなりの極論ですが、単純化すると以下のようになります。
腫瘍を残さない事=卵子を残さない事(結果として)
卵巣機能を低下させない事=卵子を残す事
決して腫瘍専門の医師が悪いと言っているわけではありません。
当然癌になってはいけませんし、嚢腫が再発する事は極力防がなければいけません。
痛みがあれば症状を軽減させる必要があります。
ただ今後妊娠を希望している女性にとって、良性の卵巣腫瘍の場合、その腫瘍の悪性転化の可能性、再発のリスクがどの程度かを考えて、第一優先は卵を出来るだけ残す事、これに重きを置く事が大切だと私は思います。
つまり、2種類ある手術の中で、挙児希望の女性に対しては、ぜひリプロダクティブな手術をすべきであると思います。
「卵子を出来るだけ多く残しながら卵巣嚢腫だけをぎりぎりで取り除く事」、これが最も大切であると思います。
挙児希望の女性に対しては、術前と術後のAMH に大きな差が出るようなオペであってはいけないと思います。