胚発生が悪いのはどうしてでしょうか?改善策はあるでしょうか? | 両角 和人(生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療専門医の立場から不妊治療、体外受精、腹腔鏡手術について説明します。また最新の生殖医療の話題や情報を、文献を元に提供します。銀座のレストランやハワイ情報も書いてます。

39歳です。採卵を5回しました。毎回3個から7個は採卵できていますが一度も胚盤胞になりません。刺激方法を変えてもダメです。受精や分割がうまくいかないと医師からは言われます。何かこの辺りに関して培養室の方で取れる対策はあるのでしょうか?

 

このようなご質問がありましたのでお答えします。

 

全ての過程の中で一番大切な瞬間は受精のところです。

性別も含めここで全ての事が決まります。

胚の染色体に異常があると流産しますが、胚の染色体が正常になるかどうかはまさにこの受精の瞬間に決まります。

 

顕微受精は培養士の技術で大きく差が出るところです。

結果が出ないときに卵子への負担を減らすべくピエゾICSIを行う事は今や当たり前の事です。

 

卵子が受精できるかどうか、卵子の準備が整っているかどうか、そこをしっかりと見極め、待つ事が大切です。見た目が成熟していたとしても受精にはまだ不十分な卵子もあります。

 

受精の判定もとても大切です。受精したと判断しても実は異常受精の事が多々有ります。異常受精の胚を培養しても妊娠する事はありません。受精が正常か、そうでないかはタイムラプス機能がついた培養庫で連続撮影しない限り絶対に見逃します。

 

そして培養です。ここが胚を悪くしないための病院がすべき事です。せっかく良い胚でも培養が不適切なら悪くしてしまいます。培養液は良くないものを使用すると有意に染色体の異常が増えてきます。培養液は大きく成績を左右します。

胚の観察の度にいちいちデッシュを外に出している事も胚へはかなりのストレスとなります。外に出さなくても観察できるエンブリオスコープはこの時代マストの培養庫だと言えます。

 

結果が出ないときはやり方を変えていく事が必要です。

刺激方法を変える事は患者さんには形として見えますが、刺激方法と受精や培養は別次元のものです。培養室で様々な改善策を取る事が可能です。

ラボの高いクオリティが妊娠には必要な事です。

 

そして時代の進歩に合わせ、培養室の機器、やり方も最新の機材や手技にアップデートする事が求められます。