子宮内細菌叢が着床に与える影響 | 両角 和人(生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療専門医の立場から不妊治療、体外受精、腹腔鏡手術について説明します。また最新の生殖医療の話題や情報を、文献を元に提供します。銀座のレストランやハワイ情報も書いてます。

今日はアイジェノミクスジャパンの方に新しい検査キットの説明会をしてもらいました。

アイジェノミクスはERA検査で近年生殖医療の分野に大きな貢献をしている会社です。

 

新しい検査は『EMMA(エマ)』、『ALICE(アリス)』で先月から検査が開始され、子宮内の細菌を詳細に調べることが可能になります。

 

エマは子宮内膜マイクロバイオームといって、子宮内の細菌環境が胚移植に最適な状態であるかどうかを判定する検査です。

次世代シーケンシング(NGS)技術を用いた子宮内膜細菌叢の分析では、培養可能な細菌も培養できない細菌も含め検出することができるとのことです。

 

アリスは感染性慢性子宮内膜炎検査で、慢性子宮内膜炎(CE)の原因として特によく認められる細菌を検出する検査です。

アリスは従来の組織学や子宮鏡検査と異なり、細菌を特定することができるようになるため、診断されずに放置される子宮内膜疾患を見つけピンポイントでかつ個別化された治療が可能になります。

(組織学検査では慢性子宮内膜炎が過小診断される一方、子宮鏡検査では過剰診断となりやすいとのこと)

 

 子宮内の環境においてラクトバチルス属(乳酸菌)がとても大切で、細菌から子宮内を守っています。

ラクトバチルス属の菌の割合が90%以上の方は、90%に満たない方よりも妊娠率が2倍以上高くなることが2016年のスタンフォード大学の研究者らにより示されています。

Am J Obstet Gynecol. 2016 Dec;215(6):684-703

 

ラクトバチルス属が十分に足りないと、慢性的な子宮内膜炎になりやすく、治療方法としては抗菌薬、膣内への乳酸菌製剤の使用、乳酸菌製剤の錠剤が好ましいとのことでした。

 

当院でも近いうちに検査を開始したいと思います。