卵管水腫の原因は? 卵管水腫はFTで治せるか? | 両角 和人(生殖医療専門医)のブログ

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卵管水腫に関して「原因は何があるのでしょうか、またFTでも治せるのでしょうか?」という質問がありましたのでお答えします。

 

いくつかの原因があります。

一番多いのはクラミジア感染症による卵管周囲癒着から卵管采が閉塞し内腔に液体が貯留することです。内腔に溜まっている感染性の液体が子宮内腔に流れ込み、どんなに良い胚盤胞を移植しても着床することが不可能になります。

 

もう一つの原因は子宮内膜症があります。卵管と卵巣に癒着が生じ卵管の先端も巻き込みます。ただ子宮内膜症はそこまで卵管の閉塞は起こさないため先ほどのクラミジア感染症ほどではありません。

 

また先天的な卵管の奇形も珍しいもののあります。腹腔鏡検査をしてみるとある程度の割合で卵管の発生の異常が見つかります。その度に驚かされますが、例えば片方の卵管だけ卵管の先端が閉じているものがあります。これは後天的なものではなく先天的なもので、それにより卵管水腫が起きてきます。その他の異常としては卵管が極端に長いとか短いとか、卵巣と離れているケース、卵管の先端の欠損など様々な異常が見て取れます。

 

卵管のオペというとFTが有名で、FTは効果的なケースもありますが、FTはあくまで子宮に近いサイドの卵管の狭窄を解除するためのもので、子宮から遠く離れた卵管の出口周辺に出来る卵管水腫はFTでは全く解決できません。

あくまで腹腔鏡手術で経腹的なアプローチにより閉じている卵管の先端を切開し解放することでしか完治できません。