福田須磨子さんの詩(長崎原爆)
何もかも いやになりました原子野に屹立する巨大な平和像それはいいそれはいいけど そのお金で 何とかならなかったかしら“石の像は食えぬし腹の足しにならぬ”さもしいといって下さいますな原爆後十年をぎりぎりに生きる 被災者の偽わらぬ心境ですああ 今年の私には気力がないのです平和!平和!もうききあきましたいくらどなって叫んだとて深い空に消えてしまうような頼りなさ何等の反応すら見出せぬ焦躁に すっかり疲れてしまいましたごらん 原子砲がそこに届いている何もかもいやになりました皆が騒げば騒ぐほど心は虚しい今までは 焼け死んだ父さん母さん姉さんが むごたらしくって可哀想で 泣いてばかりいたけど今では幸福かも知れないと思う生きる不安と苦しさと そんなこと知らないだけでも……ああ こんなじゃないけないと自分を鞭打つのだけど