Q&A1589 ☆授乳中の流産率は? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 私は36歳、夫は40歳と結婚が遅かったため、入籍前後からブログに書かれている「不妊クリニック通院前にして欲しいこと」を実践しました。おかげさまで運良く妊娠し、昨年元気な男児を出産いたしました。産後半年が経ちましたのでそろそろ第2子のことも考えたいと思っています。授かればラッキーくらいではじめ4ヶ月くらいはタイミングのみで行いたいと思っています。そのため、まだ断乳は考えていません。来年は39歳になるので4ヶ月くらいで授からなければ断乳、治療を行いたいと思っています。


そこで質問なのですが、もし授乳中に妊娠した場合、やはり流産率は高くなるのでしょうか。妊娠して断乳を勧める医師、特に何も言わない医師がいると聞きます。私の周りにも授乳中に妊娠、出産した人がいるため、授乳と流産率が本当に関連あるのか知りたいです。ちなみに私は完全母乳ですが産後3ヶ月くらいで生理がきました。不正出血かと思い産婦人科を受診しましたが、おそらく排卵を伴う生理とのことです。


また、話はズレますが、長年第2子不妊治療をして治療を諦めた40過ぎの姉が生まれたばかりの私の息子を抱いたあと、自然妊娠しました。知り合いにも不妊治療がうまくいかなかった人が、妹の子供を抱き、まさかの自然妊娠した人がいます。ニュートラルな気持ちとともに、近い関係の赤ちゃんを抱くことにより、なんらかのホルモンが分泌されて妊娠しやすくなるということは考えられるでしょうか。私には新しい甥か姪は息子が連れてきてくれたような気がしてなりません。

A 論文を調べてみましたが、授乳中に妊娠した場合に流産率が高くなるとのデータは見出せませんでした。しかし、授乳中の妊娠率は間違いなく低下します

 

J Mammary Gland Bilo Neoplasia 1997; 3: 291(英国)

Ann Med 1993; 25: 175(オーストラリア)

要約:授乳による無月経に基づく自然な避妊法は、発展途上国では重要です。乳頭刺激は視床下部からのGnRH分泌を抑制し、下垂体からのFSH分泌を抑制するため、卵胞発育がなくなり無排卵&無月経になります。また、同時に下垂体からのプロラクチン分泌を増加させます。産後半年以内の女性では「月経→排卵」となるため、月経がなければ妊娠を98%防止できますが、この期間内にひとたび月経が起きてしまうと授乳性避妊効果は消失します。また、産後半年以降では「排卵→月経」となるため、授乳性避妊効果は不確実です。しかし一般的に、授乳を続ける女性の多くでは、授乳性避妊効果が1〜2年続きます。

 

質問者さんの場合には、産後半年以上経過していますので、妊娠の可能性は十分あります。

 

また、後半の質問「近い関係の赤ちゃんを抱くことにより、なんらかのホルモンが分泌されて妊娠しやすくなる」ことについては全く証明されていません。