Q&A1627 ☆モザイク胚について | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q モザイク胚に関する先生のブログも、何度も読みました。当方も凍結受精卵の中に、モザイクのものがあります。どの染色体にあるからとか、何箇所あるからとか、そんな簡単に判断できるものではないかと思いますが、例えば10番染色体にあるモザイクの場合、どう判断すべきでしょうか。移植すべきか、すべきでないか、ご教示いただけると幸いです。

 

A モザイク胚(と断定された胚)に関しては、国際PGD協会(PGDIS)が2016年夏にまとめた報告書では、下記の取り扱いを推奨しています(2017.1.24「☆ASRM:PGS特集 その1 モザイクの取り扱い」の記事を参照してください)。

 

モザイクモノソミー:移植可能(X以外)

モザイクトリソミー(1,3,4,5,6,8,9,10,11,12,17,19,20,22,X,Y):移植可能

モザイクトリソミー(2,7,13,14,15,16,18,21):移植保留(優先順位低下)

 

しかし、部分的モザイクの疑いとの記載の胚は、原則として全て移植可能だと考えます。現在のPGSの方法では「部分的モザイクの疑い」と「検査のエラー(測定誤差、ノイズ)」を区別することができないからです。この場合の移植胚の優先順位はモザイク胚だった場合に準じます(上記の通り)。「部分的モザイクの疑い」と表記されたものについては、あくまでも移植の順番(優先順位)を決めるためのツールとお考えください。

 

PGSが行われるまでは全ての胚を検査せずに移植していた訳ですが、異常な赤ちゃんが多かったという事実はありません。したがって、多くの「モザイク胚(と断定された胚)」が移植され、「部分的モザイクの疑い」とされた胚が移植されていたことになります。したがって私は、モザイク胚(と断定された胚)以外についてはあまり神経質になる必要はないのではないかと考えています。

 

質問の答えですが、10番染色体はモザイクモノソミーでもモザイクトリソミーでも移植の対象になります。部分的モザイクの疑いの場合でも同様です。移植すべきとお考えください。