Q&A1774 男性のグリベックは? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 夫が胃GISTの腫瘍摘出後、グリベックを服用してもうすぐ1年です。私は夫が薬を服用開始する前の月に奇跡的に妊娠し、先月予定日を超えて出産しましたが分娩中の事故により息子が亡くなってしまい絶望しています。悲しくて悔しくてすぐにでも息子が戻ってきてほしいと望んでいます。
グリベック服用中は男性の場合もやはり精子には影響があるのでしょうか。精子の運動率が減ると言われていて妊娠自体が難しくなるだろうとは思いますが、たとえばそれでも妊娠できた場合は大丈夫ということなのでしょうか。

 
A グリベック(イマチニブ)は、チロシンキナーゼインヒビター(分子標的治療薬)であり抗悪性腫瘍剤(抗癌剤)に分類されます。慢性骨髄性白血病、KIT(CD117)陽性消化管間質腫瘍(GIST)、フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病、FIP1L1-PDGFRα陽性の好酸球増多症候群、慢性好酸球性白血病に保険適応の薬剤です。グリベックによる精子への影響には賛否両論がありますので、絶対的なことは言えませんが、下記論文も報告されていますので、マイナスの影響は考慮すべきと思います。妊娠できた場合に大丈夫かどうかについてはデータがありませんので、できればグリベックの服用を中止して精子凍結を行い、顕微授精をトライして欲しいと思います。
 

Target Oncol 2017; 12: 827(中国) doi: 10.1007/s11523-017-0521-6

要約:イマチニブ服用中の男性の精液中のイマチニブ濃度は血清中のイマチニブ濃度と同じレベルであり、精液所見(数、運動率)が低下します。精巣と精巣上体に変化はありませんが、陰嚢水腫が出現します。なお、ホルモン濃度に変化はありません。

 

なお、このQ&Aは、約4〜5ヶ月前の質問にお答えしております。