Q&A1832 チョコレート囊腫でオペ、4回目の開腹手術です | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 37歳 

子宮内膜症の再発でオペを受けます。両側チョコレート嚢腫、左卵巣膿瘍、帝王切開に続き4回目の開腹オペです。チョコの時も帝王切開の時も癒着していました。今回も癒着しているようです。MRIでは右卵巣に内膜症があるようで、エコーでは4cmと6cmの物が確認出来ました。生理痛と排卵痛、性交痛があります。排卵期には卵管液の逆流を思わせる水様性のおりものがあります。
不妊治療の医師からは凍結胚移植をする前にオペをした方が良いと言われ紹介状を書いてもらいました(ホルモン周期で戻した方が成績が良いが今の状態では痛みが強く卵管液も増えるのでよくない)。紹介先の医師には「卵巣腫瘍」と言われ、大きいのでオペ後組織診に出して良性か悪性か見ると言われました。二人目を希望していましたが悪性ならそれどころではなく、二人目はあきらめようかとも思っています。子供を望む、望まないで術式が変わると思うのですが、どうしたら良いのでしょうか。

残り1個の凍結胚は戻したいとは思いますが、両側の卵巣を取っても妊娠は可能でしょうか。温存オペをして後で悪性だからリオペと言われるのも嫌だしもうわかりません。主治医に聞きにくいので質問させていただきました。何かアドバイスを宜しくお願い致します。

 

A 37歳で4+6=10cmのチョコレート嚢胞でしたら、悪性の可能性はそれほど高くありません。通常でしたらチョコレート囊腫の部分を摘出するのですが、これ以上オペをしたくないのでしたら、両側の卵巣摘出が良いでしょう。両側の卵巣を取っても、ホルモン補充でしたら妊娠は可能です。もともとホルモン補充周期の胚移植は閉経後の女性のために始められた方法ですから、たとえ閉経しても移植は心配ありません。

 

日本産科婦人科学会誌の研修コーナーには、下記のように記載されています。
1)45歳以上かつ閉経後かつチョコレート嚢腫の最大径10cm 以上の場合は癌化率が高いため、すぐ卵巣摘出すべき。
2)20代および30代のチョコレート嚢腫の最大径10cm以上のときは悪性化を考慮して卵巣摘出が望ましい。
3)40歳以上かつチョコレート嚢腫の最大径6cm以上の場合は卵巣摘出が望ましいが、経過観察する場合は悪性化を常に考慮する。
4)チョコレート嚢腫の最大径6cm未満の場合は経過観察しても良いが、CA125測定や画像診断は定期的に行ったほうが良い。
5)未婚女性や不妊症患者の場合は、卵巣摘出術の代わりに嚢腫の部分摘出を選択することが多いが、顕微鏡レベルの検査をしっかり行って悪性がないことを確認すべき。
6)20代および30代のチョコレート嚢腫の悪性化は「万が一」のことで,チョコレート嚢腫がない一般集団と同じ発癌率であり,過度に悪性化を恐れる必要はない。
7)閉経期前後のチョコレート嚢腫は明らかに悪性化の頻度が増加するため、閉経すればチョコレート嚢腫が治るという説明はすべきではない。また、薬剤投与によりチョコレート嚢腫が縮小したら悪性ではないという誤った考えがあるが、縮小しても悪性の場合はある。チョコレート嚢腫が悪性化する頃に、どういう訳か月経困難症などの生理に伴う諸症状が消失することが多い。

 

下記の記事を参照してください。

2013.6.8「☆チョコレート嚢腫のある方の注意点

 

なお、このQ&Aは、約4〜5ヶ月前の質問にお答えしております。