Q&A1873 顕微授精で精子を頭から入れるのは何故?」 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 私は第一子を顕微で授かったのですが、体外受精の説明会に参加した時「顕微授精で卵子に精子を注入するとき、精子の頭から入るようにしないといけない」と医師が説明していて、それって何故だろう?と今も気になっております。自然な受精の場合は精子は頭から卵子に侵入しますが、人工的に精子を注入するのに向きは重要なんだろうかと。
 

不妊治療の専門医にかかる機会は今のところほぼないので、知っていそうな人にはこの先出会えないかも…と思うとつい先生を頼ってしまいました。もし先生が理由をご存じでしたら、いつかお答えいただけたらと思います。私が今現在この疑問で悩んでいるわけでは全くないので、お手隙の際で構いません。
 

A 精子が卵子の膜を破って卵子に侵入するためには、精子の頭にある酵素が必要ですので、自然の受精では頭から行きます。顕微授精の場合には卵子の中に精子を直接注入できれば良いのですから、頭からでも尻尾からでも構わないはずです。しかし、精子の尻尾から入れようとすると針の先から精子の頭を出すのに苦労します。頭から入れれば尻尾を出すのに苦労はありません。このため、顕微授精の場合も精子を頭から入れるのが良い訳です。なお、マウスでは精子の頭さえ卵子に入れれば良いのですが、ヒトでは頭と頸を入れる必要があります。頸の部分に中心体が存在するためです。従って、頭だけ切り離して入れても受精卵はできません。

 

なお、このQ&Aは、約4〜5ヶ月前の質問にお答えしております。