Q&A1951 Q&A1694の続き | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 2018.1.6「Q&A1694 卵巣チョコレート嚢腫術後採卵1回、初期胚凍結1個」でチョコレート嚢腫7cmの摘出後IVFの質問にお答え頂きました。

転院し、AMH 0.56、精子抗体陰性、ビタミンD、テストステロン、DHEASの値を計測し、DHEAのサプリメント(pure encapsulations)を50mg/日摂取しております。
また、状態が良くなかった精子も、ポラプレジンクOD錠と補中益気湯の摂取で少し改善しました。
総精子量 1590万/mL(禁欲1日)
洗浄後の濃度 2400万/mL
直進運動精子 630万/mL、26.3%
直進性不良精子 1060万/mL、44.2%
奇形率 45.8 %

今後のIVFへのかなり予算が限られているので一度の採卵で出来るだけ多くの卵子を目指すべく、前周期の生理3日目から、メラトニン 毎日(採卵まで)、プレマリン0.625mg x2錠 1日2回 24日間、15日目から、デュファストン 5mg1日2回 8日間、カバサール0.125mg 1週1回 3日目 10日目 17日目服用。
23日目に生理が来て(通常は27ー28日周期)、生理の5日目から、クロミッド50mgを毎日HMG300IU(富士)X 4日間行ったのですが卵胞の発育が見られず、1日あけて 10日目にHMG150IU(フェリング)を射ち、12日目に右の卵巣(チョコレート嚢腫手術後)に1つ、左に1つの、2つ共に11mm程度しか確認できず、ドクターには今後も高刺激してもおそらく2つくらいしか生育しないので、何度も採卵を繰り返す以外には難しいと告げられました。

 

前回転院前の病院で(昨年9月)ロング法(スプレキュアを前周期から行い)、採卵周期にhMG300IU投与を9日間で6個の卵胞から4個が採卵できたので、これ以上を採卵数を期待していたのですが、今年40歳でAMHとチョコレート嚢腫手術、かつ現在も左右共に2cm程度のチョコレート嚢腫がある状態では、一度の採卵数を増やすことは難しいのでしょうか。

精子の状態は少し回復したとはいえ受精能力があるのかどうかもわからないのもあり、単純に正常受精卵数を増やすには一度に出来るだけ多くの卵子を得て、体外受精、顕微受精共に試してみるのがいいと思っています。

少し気になっているのが、採卵期前周期の前に生理が32日で生理周期がズレ始めているのではないか、この採卵前に3周期ほど人工授精を行い毎回HMG(富士)225IUを数回使用していたため、HMG(富士)に対する反応が鈍くなり卵巣が反応しなくなっているのではないかと考えたのですが、そういった可能性は低く刺激に使う薬剤(たとえはHMG ならフェリングや他を用いる)や方法などを変えても5〜7個の採卵を目指すことも難しいのでしょうか。

生理3日目の血液検査で、LH 4.8 mIU/ml、FSH 7.9 mIU/ml、PRL 17.9 ng/ml
クロミッドとHMG (富士)で刺激後、生理9日目の血液検査で、LH 13.6 mIU/ml、FSH 40.5 mIU/ml、E2 61.8 pg/mlで刺激は十分とのことでした。

 
その後採卵できた2つはconventional-IVF で2つとも受精し一つはday3に10-12細胞になりday5に胚盤胞になりましたが、受精卵内に液胞が多くなり活動が止まりました。もう一つはday3に4-6細胞でday5に胚盤胞になりましたが、黒い影のようなものが中に見られ凍結には耐えられないだろうという判断でそのまま移植しました。結果は8日後にhCGが13で11日後に22で育つことができませんでした。 
 
実際、結局はかけるお金が潤沢でないと可能性も持てないのではと言う気持ちにならざるを得なくなってます。
 
A 気になる所を記します。
1 ビタミンDは、25ヒドロキシビタミンD(25OH-VitD)を採血できていますでしょうか(基準値30〜50)。1,25(OH)2-VitDあるいは25-OHビタミンD分画D2/D3は異なる項目ですので、ご注意ください。また、DHEASは改善を確認していますでしょうか(基準値>200)。
2 プレマリンとデュファストンで採卵前周期の準備をしていますが、E2製剤であるプレマリンは前周期後半から使用することで次周期の卵胞数改善の準備になりますが、デュファストンなどの黄体ホルモン製剤は逆効果です。
3 卵巣刺激中のFSHは30前後が最も卵巣の反応が良くなりますので、40.5はやや高いです。このような場合は、HMG/FSH製剤を減量した方が卵胞発育が良くなります。私なら、生理の3日目から、クロミッド1Tとフェリング150単位を連日用います。HMG(富士)に対する反応が鈍くなっている可能性はあまりないと思います。
4 胚盤胞のみを狙っているようですが、培養状況が良くない場合には初期胚での移植をお勧めします。また、日本人は凍結胚の方が新鮮胚よりも妊娠成績が良いですので、全胚凍結し初期胚2個融解胚移植が良いでしょう。
 

なお、このQ&Aは、約3ヶ月前の質問にお答えしております。