Q&A1964 正常胚で脊髄髄膜瘤、第二子胚移植では? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 都内数カ所の病院で数年程不妊治療をするも妊娠に至らず、関西の某クリニックで体外受精と着床前スクリーニングで得られた正常胚を移植し、42〜43歳で妊娠出産に至りました。不育症に関する検査で数値に問題あり(抗カルジオリピンIgMが11、プロテインS活性が50%)とのことで、アスピリンの服用とヘパリン注射をしていました。妊娠前からサプリメントにて葉酸摂取もしていましたが、子どもは脊髄髄膜瘤(水頭症あり、いわゆる二分脊椎症)で産まれました。手術等何度かありましたが、1歳を過ぎ現在は通院は多いものな元気に過ごしています。

質問:正常胚をもう一つ預けており、可能なら第二子を希望しているのですが、第二子も脊髄髄膜瘤で産まれる可能性が高いのか(5%程度高いという記事を何かで見ましたが、信頼できる記事か不明)、
現在44歳という年齢による問題(着床妊娠に至る可能性など)、他、不育症の数値によりまたヘパリン注射続けるのか(自己注射のストレスが強かった)など、心配が尽きません。松林先生はどのようにお考えでしょうか、お伺いしたく質問申し上げます。


産院の医師は、染色体異常は先天的な病の2割程度ですから…分からない事が多いですと言われました。正常胚といっても他の先天病があること、もちろん知識としては勉強したものの、第二子にも何かある可能性が高いのかどうか…悩んでいます。

 

なお、妊娠時はホルモン補充での移植でしたので、もし移植となる場合は、やはり同様にホルモン補充が良いという認識でおります。もし異なる場合には、回答くださる際に、一言頂ければ幸いです。

 

A 第1子が脊髄髄膜瘤で、第2子も脊髄髄膜瘤で産まれる頻度に関する論文は、私が検索した範囲ではありませんでしたので、5%程度高いという記事の信憑性には疑問が残ります。第1子が神経系の異常の場合の第2子妊娠での葉酸は4〜5mg摂取が必要です。つまり、通常の10倍量です。これによる胎児神経系異常の予防効果は85%ありますが、100%ではありません。また、着床前スクリーニング検査は染色体異常を除外するものであり、全ての胎児異常をゼロにするものではありません。

体外受精では、採卵時の女性の年齢が最も大きな要因であり、移植時の年齢には左右されませんので、安心して移植に臨まれることをお勧めします。また、出産後には、体質が変化し不育の治療が不要になることがありますので、不育検査の引っかかっていた項目を今一度採血し、再検討されるのが良いでしょう。最後に、妊娠した時の方法を踏襲するのが良いですので、次回もホルモン補充での移植をお勧めします。

 

下記の記事を参照してください。

2018.9.20「Q&A1957 ☆葉酸5mg摂取しても二分脊椎でした

 

なお、このQ&Aは、約3ヶ月前の質問にお答えしております。