Q&A1970 36歳、AMH 0.12、初期胚移植3回不成功 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 夫婦共36歳 
AMHが0.12という低値で初めて行ったクリニックで、卵管造影、タイミング、AIHはすっ飛ばし体外受精を勧められ、現在5回採卵しています。その内、3回初期胚移植(3日目、4分割×2回、8分割×1回)しましたが、全て陰性。現在は胚盤胞移植を目指しています。卵胞計測時、見えている卵胞は数個(4~5コ)あるのに、採卵してみると、空胞や変性卵ばかりで、1個残るかどうかというのが続いています。E2の値もいつも1100~1200でした。

主人の精子も運動率はWHOの基準値以上と言われていますが、以前、別のクリニックで精子の検査をしてもらった際、全体の運動率は基準値以上だが、直進の運動率は3~11%と低く、奇形率も97%前後と言われました。しかし、現在体外受精を行っているクリニックでは直進運動率の値は出しておらず、顕微授精であれば奇形率が高くても問題ないと言われています。

そして、以前、移植に向けてD9にてクリニックを受診した際、既に排卵済みと言われてしまい、再度D3に受診するよう言われました。そして、D3に受診するとHCG 23。おそらくD9で受診した際に排卵済みと言われた卵胞で着床しかけたのでは・・・と言われました。

①上記のことを受けて、卵管造影などをしていませんが、一度着床しているということは、卵管は通っているという解釈で良いのでしょうか。
②ここ最近続けて採卵をしていますが(クロミッド1日1錠での誘発)、空胞や変性卵が続くのは卵巣が疲れてきているからでしょうか。AMHの低値が関係しているのでしょうか。一度、1ヶ月~2ヶ月休んだほうが良いのでしょうか。
③現在、全て顕微授精にてお願いしていますが、精子の直進運動率というのは、顕微授精にはあまり関係ない値なのでしょうか。
④3回初期胚で陰性を出していますが、胚盤胞移植では妊娠に至る可能性は、やはり高くなるのでしょうか。

 

A 

①hCG は着床しないと出ませんから、着床しています。一度着床しているということは、少なくとも片側の卵管は通っているということになります。

空胞や変性卵が続く場合の原因は明らかにされていません。AMH低値との関連はあり得ますが、断定はできません。休憩すると復活することごありますので、一度お休みするのもありです。

③顕微授精ではより良い精子を選べるため、精液所見が良くなくともある程度はカバーできます。しかし、良好精子の中からひとつ選ぶ場合と、不良精子の中からひとつ選ぶ場合に選ばれる精子は違います。したがって、直進運動率が良い方がより良い精子を選ぶことができます。

④初期胚2個が胚盤胞1個に相当しますので、確率は高くなります。しかし、胚盤胞になる確率は5割ですから、胚盤胞にならない可能性もあります。そのような場合は、胚盤胞を狙わず初期胚2個移植がお勧めです。

 

なお、このQ&Aは、約3ヶ月前の質問にお答えしております。