Q&A1971 娘が伝染性単核球症です | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 半年前、小5の長女に微熱(夜になると上昇)・アデノイド・寝汗といった症状が続き、ある朝突然両頸部リンパ節がパンパンに腫れて耳鼻咽喉科を受診したところ、数日後に血液検査により伝染性単核球症であると診断されました。肝臓の薬を1週間服薬し、あとはしっかり休むなどして1ヶ月ほどで治りました。
 
最近このアメーバブログにて慢性活動性EBウイルス感染症(CAEBV)でお子さんを亡くした方、また移植し闘病している方の記事を読みました。伝染性単核球症を一度発症した人が、いつか免疫が落ちるなどした時にまたEVウィルスが暴れだし慢性型に移行してしまうということは起こったりするのでしょうか。伝染性単核球症と慢性型EVウィルス感染症の関連性は高いのでしょうか。これから受験勉強などで一層忙しくなることが考えられます。もしそういったリスクがあるのならば考え直したいと思っています。私個人は妊活を続けていたものの、二度の流産を経験後諦めた者です。が、松林先生の記事は毎日拝読しております。不妊治療とは関係のない質問ですが、子どもが大切で質問させていただきました。
 
A 慢性活動性EBウイルス感染症(CAEBV)は、EBウイルスに感染したTリンパ球、NK細胞が増殖し、臓器に浸潤して多彩な症状を示す難治性疾患です。日本では、年間約25人の罹患が報告されています。しかし、EBウイルス自体は成人の90%以上が感染している普遍的なウイルスです。初感染では、軽微な上気道感染のことが多いですが、一部で伝染性単核症と呼ばれる良性熱性疾患をきたします。さらに一部の方では、B細胞を標的とするEBVがT細胞あるいはNK細胞に感染し、多臓器に浸潤し全身の炎症を生じ、CAEBVを発症します。普遍的なEBVが、なぜ一部の個体でT細胞・NK細胞に感染するのか、またこれらの細胞がなぜ宿主免疫から回避するのかは不明です。したがって、既知の先天性・後天性免疫不全症候群が否定された場合に、本疾患と診断されます。本症は、日本、韓国、中国北部などの東アジアの小児・若年成人を中心に発症するため、遺伝的背景の存在が疑われています。また、疾患概念が認知されるに従い成人例の報告も増えています。EBウイルス感染T細胞およびNK細胞を体内から排除できないことから、何らかの免疫不全を持つ疾患であると推測されています。
 
慢性活動性 EB ウイルス感染症(CAEBV)診断基準(厚生労働省研究班 2015 年)

1) 伝染性単核症様症状が3か月以上持続(連続的または断続的) 

2) 末梢血または病変組織におけるEBウイルスゲノム量の増加

3) T細胞あるいはNK細胞にEBウイルス感染を認める
4) 既知の疾患とは異なること

 
CAEBVの治療には、エトポシド、サイクロスポリンA、デキサメサゾンが用いられますが、寛解は厳しいのが現状で、造血幹細胞移植が唯一寛解の可能性がある治療法です。名古屋大学のCAEBV研究班で最先端の研究が進められています。
 
質問の回答としては、伝染性単核球症のごく一部の方に慢性活動性EBウイルス感染症(CAEBV)が発症しますが、確率は極めて低いと考えますし、1ヶ月ほどで治ったのであれば、大きな心配は不要と考えます。
 

なお、このQ&Aは、約3ヶ月前の質問にお答えしております。