Q&A2606 新型コロナウイルスへのアビガン | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 仮の話で大変恐縮ですが、高齢のため、万一新型コロナウイルスに感染してしまうと治療が中断され限り少ないチャンスを逃し子供を諦めざるを得なくなるのではないかと不安です。万が一の備えとして新型コロナウイルス感染やアビガンによる妊娠治療への影響を教えて頂けないでしょうか。


アビガンは胎児への影響が言われておりますが、卵子や精子への影響はありますか。仮にアビガンを服用した場合、どれ位の期間をあければ、卵子に影響なく採卵をすることができるのでしょうか。アビガン服用後は「1週間避妊を」というような情報を耳にしましたが、服用時に体内にある原始卵胞(男性の場合精子)が、排卵して受精に至るのは数か月後であることを考えると、なぜ「1週間」で大丈夫なのかと疑問に感じてしまいます。胎児への影響はあるが、卵子や精子への影響は心配ないという事なのでしょうか。


A 新型コロナウイルス感染による妊娠初期の胎児への影響は現時点では不明です。この件に関しては、今年の秋以降に判明します。アビガン(Favipiravir)の添付文書には、「動物実験において、アビガンは初期胚の致死及び催奇形性が確認されていることから、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないこと」と記載されています。初期胚とは受精後であり、催奇形性も受精後に生じる現象です。また、「アビガンは精液中へ移行することから、男性患者に投与する際は、その危険性について十分に説明した上で、投与期間中及び投与終了後7日間まで、性交渉を行う場合は極めて有効な避妊法の実施を徹底(男性は必ずコンドームを着用)するよう指導すること」と記載されています。「1週間」は受精可能な精子の生存期間を示しています。従って、女性は排卵まで、男性は射精の1週間前までのアビガン服用であれば心配ないことになります。

 

なお、現時点では新型コロナウイルスに有効な治療薬やワクチンはありません。当初期待されたロピナビル+リトナビル(カレトラ)、ヒドロキシクロロキン(プラケニル)に有効性は確認されず、現在レムデシビル(ベクルリー)とファビピラビル(アビガン)の臨床治験が進行中です。

 

なお、このQ&Aは、約2ヶ月前の質問にお答えしております。