Q&A2714 コロナウイルス感染対策にビタミンDは? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q コロナウイルス感染対策にビタミンDはどうなんでしょうか。感染した時重症ならない為、あるいは感染予防にはならないでしょうか。リプロのビタミンDが残っていて、授乳中ですが飲めるのかなと。

 

A 最新の論文をご紹介します。

①Lancet Diabetes Endocrinol 2020; 8: 570

要約:新型コロナウイルス感染対策にビタミンDが有効であるとすれば、二つの可能性が考えられます。ビタミンDが気道上皮細胞の抗細菌物質を分泌することによる防御機構と、ビタミンDがACE2系を促進することで新型コロナウイルス侵入阻止炎症反応を抑制することです。ビタミンDの疫学研究者であるアイルランドのRose Anne Kenny氏は、状況証拠に疑いの余地はなく(ランダム化試験はありませんが、待った無しの現状では)新型コロナウイルスのパンデミック時にはビタミンDサプリを服用すべきであるとしています(特に日光を浴びれない=外出できない方)。食事とライフスタイルの研究者であるロンドンのAdrian Martineau氏は、ビタミンD欠乏症は新型コロナウイルスの予後不良因子の一つでしかなく、しかも安全かつ安価に改善できるため、十分な検証がなされないままメリットばかりが一人歩きしてしまうのが問題であるとしています。

 

②Int J Environ Res Public Health 2018;15: 2241

要約:赤ちゃんにもビタミンDは必要な栄養素です。母乳中のビタミンD濃度は、母体血中の濃度の最大20%程度しかなく、授乳のみでビタミンDを賄うためには、相当量のビタミンD服用が必要になります(一方、臍帯血中は母体血中の濃度の50〜80%あり)。しかし、授乳中のビタミンDの効果を検討した報告は現在のところありません。

 

解説:論文①を含め、新型コロナウイルス感染の予防にビタミンDが有効である可能性はありますが、疫学研究や観察研究のみであり、これだけでは断定できません。真の有効性を確定するためには、ランダム化試験が必要です。ただし、ビタミンDはそもそもビタミンですから、飲んで差し支えるものではありませんが、過度な期待を抱いてはいけないと考えます。論文②は、授乳中のビタミンD服用は赤ちゃんにとっても差し支えないことを示してます(ただし、赤ちゃんへの効果のほどは不明です)。

 

下記の記事を参照してください。

2020.4.29「☆新型コロナウイルス感染:ビタミンDが有効!?

 

なお、このQ&Aは、約3ヶ月前の質問にお答えしております。