Q&A2811 LH-RH負荷試験は? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 質問なのですが、リプロさんではLH-RH負荷試験は元々やってらっしゃらないでしょうか。以前(松林先生のブログだと思ったのですが)LH-RH負荷試験が大事だという記事を見たような気がしまして、今のクリニックでは実施されていなかったので、転院を悩んでおりました。改めて検索すると、記事が見当たらなかったので私の勘違いかも知れないです。

松林先生はLH-RH負荷試験についてどうお考えでしょうか。TRH負荷試験については必要ないとの記事を拝見させて頂きました。例えば周期が長くても多嚢胞でも排卵していたら、排卵誘発剤の使用は必要ないでしょうか。多嚢胞の治療はフェマーラ、ゴナールFなどでしょうか。

 

A リプロでは、LH-RH負荷試験は(開院当初から)実施しておりません。この検査は、(教科書的に)脳から卵巣までの女性ホルモンのネットワークのどの部分の異常なのか「診断」するためのツールであり、実際の治療に際してのメリットがほとんどないためです。採血も最低2回多いと4回やりますから、そこまでする意味はありません。LH-RH負荷試験について、私のブログ記事には一度もアップしていません。

 

多嚢胞性卵巣(PCO)でも排卵がしっかりあれば投薬は必ずしも要りません。しかし、あまりに周期が長くなると、妊娠のチャンスが減るため、投薬をお勧めしています。まず、耐糖能異常がないかどうかをHOMA-R検査で確認し、もしあるなら、そちらの治療を行います(糖質制限、メトホルミン)。リプロでの治療方針は、概ね①レトロゾール(フェマーラ)1Tx2〜5日→②レトロゾール+クロミッド 1Tx5日(同時服用)→③ゴナール漸増法→④ART治療(体外受精、顕微授精)、としています。途中で、ドリリング手術を紹介する場合もあります。

 

なお、リプロではTRH負荷試験も実施していません。こちらは、潜在性高プロラクチン血症の診断をしても治療する必要がないためです。

 

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、多嚢胞性卵巣(PCO)の治療については、下記の記事を参照してください。

2019.11.13「☆PCOSの方は妊娠しにくいのか?

2019.4.4「☆PCOSにはレトロゾール単独よりレトロゾール+クロミッドがより有効

2017.10.25「Q&A1621 ☆多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)でしょうか?

2017.8.17「やはり、PCOSにはクロミフェンよりフェマーラ

2017.4.23「☆多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)における治療戦略」BMJ(メタアナリシス)

2015.3.8「☆PCOSの第一選択はフェマーラ」Cochrane review(メタアナリシス)

2014.11.6「PCOSにはクロミフェンよりフェマーラ!」N Engl J Med(RCT、N=750)

2017.1.11「☆フェマーラの安全性について

 

耐糖能異常については、下記の記事を参照してください。

2020.3.14「PCOSの耐糖能異常にメトホルミン and/or ロシグリタゾン

2019.2.4「標準体重のPCOSの代謝異常は?

2018.8.25「PCOSの家族の糖代謝:メタアナリシス

2018.1.12「男性ホルモンと西洋型食事でPCOSが誘導される?

2016.5.4「欧米型の食事でPCOSになる?

2013.8.28「☆PCOSには食事と座位が関係する

2013.6.3「☆PCOMとは?

 

なお、このQ&Aは、約3ヶ月前の質問にお答えしております。