もし、非妊娠時と安全性が変わらないとして、
①aCL-IgG陽性の場合、そうでない人よりも妊娠中に打つことに危険性が伴うとお考えでしょうか。
②aCL-IgG陽性の場合、出産後でも打たない方が無難でしょうか。
③aCL-IgG陽性の場合でも、胎盤のみに血栓ができやすいタイプと自身の体に血栓ができやすいタイプがあるものと認識しております。自身の体に血栓ができやすいタイプの場合は血栓ができやすくなると言われているコロナワクチンの危険度があがるのか気になりました。また、どちらのタイプなのか(胎盤か自身の体に血栓ができやすいのか)を判別できるポイントがありましたら、教えていただけると有難いです。
A まず、本日の記事「☆新型コロナウイルスワクチンと血栓症(TTS)」をご覧ください。
抗リン脂質抗体による血栓の作用機序と新型コロナウイルスワクチンによる血栓症(TTS)の作用機序は全く異なるものです。したがって、aCL-IgGの有無でワクチンによる血栓リスクは変化しないものと推察されます。もっとも、mRNAワクチンであるファイザー社およびモデルナ社のワクチンを打つ場合にはTTSは全く考慮しないで良いです。アデノウイルスベクターワクチンであるアストラゼネカ社およびジョンソン&ジョンソン社のワクチンを打つ場合にのみTTSの可能性が生じるかも知れません。
①②どちらの種類のワクチンも使用可能と考えますが、より安全度の高いmRNAワクチンをお勧めいたします。
③胎盤のみに血栓ができやすいタイプと自身の体に血栓ができやすいタイプと記載していますが、正確には、流産タイプと血栓タイプです。aCL-IgGが陽性でも、胎盤にさえ血栓ができない流産が存在します。基本的に、産婦人科で見つかる抗リン脂質抗体は、ほぼ全員流産タイプとお考えください(不育症・不妊症で検査→抗リン脂質抗体陽性)。血栓タイプは、内科で見つかります(血栓症で入院→検査→抗リン脂質抗体陽性)。流産タイプではほとんど血栓はできませんが、だからと言ってアデノウイルスベクターワクチンによる血栓ができないとは言えません。mRNAワクチンをお勧めいたします。
④大きなリスクはないと考えますが、より安全度の高いmRNAワクチンをお勧めいたします。
COVID-19 関連血栓症アンケート調査結果報告(日本血栓止血学会、日本動脈硬化学会)2020.12
TTS の頻度は0.01〜0.001%ですので、新型コロナウイルスワクチンを打たなかった場合に、新型コロナウイルスに感染した方が血栓リスクが高くなります(1.85%)。ワクチン(mRNAワクチン)を打っておいたほうが安全度が高いと思います。
なお、このQ&Aは、約1ヶ月前の質問にお答えしております。