Q&A3488 43歳、リプロ東京通院中 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 2022.4.26「Q&A3278 今後の治療について相談」にてアドバイスをいただき、本当にありがとうございました。


その後、お休み周期を経て、先日採卵し3つ取れ、D3で8G3、9G3、8G3に育ち、3つとも胚盤胞になりました。D5の3BC、3BBとD6の3ACです。現在、凍結胚が9つあります(Day3; 5G3, 5G3, 4G4, 8G2. Day5; 5BD移入胚, 3BC, 3BB, 3AC. Day6; 3AC)。前回の相談では、初期胚と胚盤胞合わせて10個凍結できたら移植へと助言いただき、目安の個数に近づいてきましたが、グレードがあまり良くないのと、どれもPGT-Aを行なっていません。
 

以前、リプロで相談した時は「PGT-Aを実施したければそれも良し」「実施の有無は最終的な妊娠率に差はない」と、診察してくださった先生方は、皆様このような回答でした。先生方のご意見を受けて素人ながら考え、最終的な妊娠率に差が無いならば、もともとあまりグレードが良くない胚盤胞をPGT-Aに出して、細胞を傷つけてしまう可能性があるならば、PGT-Aは未実施でいこうと思い、今に至ります。あと2回程度採卵を続けようと考えていますが、このままPGT-Aをせずに凍結を続けていいものかどうか、迷いがあります。松林先生なら、どうお考えになりますか。それから(こんなことを聞かれても困ると思いますが)上記の9つの凍結胚のグレードで、妊娠の可能性はあるものでしょうか。

前クリニックからの胚移入の手続きの際「病院によって胚の評価を甘くつけているところもある」ということを医師から言われました(前クリニックの医師には伝えていませんが)リプロに転院してから、良好胚盤胞もできるようになりましたのに、気がかりです。胚の評価は病院によって、そんなに違うものでしょうか(前クリニックは独自の評価でDまであります。一般的な分類でのCが付けられないものをDとしているわけではなく、より詳細に評価しているとのことです)。

 

A 私は、基本的にPGT-Aをあまり推奨していません。胚のダメージは想像以上に高いと考えられ、正常胚の半数しか出産できないからです。PGT-Aを実施するメリットは、正常胚の確率を知ることだと私は考えています。もちろん獲得できた正常胚で妊娠できれば良いですが、妊娠しなかった場合には、例えば正常率20%の方はPGT-Aせずに初期胚5個移植をします。脱出胚盤胞にならなければ検査すらできませんので、通常の胚盤胞凍結よりもハードルが上がります。

 

現在凍結中の9つの胚での妊娠の可能性は十分あると思います。前回の回答⑤に記したように、新鮮胚盤胞移植で1勝1敗ですから、新鮮胚盤胞移植が必勝法とは言えないと思います。着床の窓は変化することがありますので、着床の窓の検査(ERPeak)を行なってから移植のプランを決めるのが良いと思います。

 

胚の評価は国際的な分類に倣うべきだと考えます。これまで世界各国で様々な評価が試されてきましたが、Veeck分類(初期胚)とGardner分類(胚盤胞)を超えるものは見つかっていません。もし、ご自分のクリニックの評価法が最良であるとおっしゃるのであれば、論文に示して世界的な判断を受けて欲しいと思います。培養士の目は節穴ではありませんし、正義感が強い方が多いですので、胚の評価を甘くつけるなど考えられないことだと思います。

 

なお、このQ&Aは、約4週間前の質問にお答えしております。