弓状子宮の分類について | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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本論文は、弓状子宮のESHRE/ESGE分類について再検討の余地ありと述べています。

 

Hum Reprod 2018; 33: 600(英国)doi: 10.1093/humrep/dey043

要約:2011〜2014年に弓状子宮と診断された270名3D超音波の画像データをESHRE/ESGE基準1名の診断医により後方視的に再検討しました。子宮底部の突出度の判定にはメイン法とサブ法があります。メイン法は子宮筋層の外側のライン(O)、左右卵管角を結んだライン(T)、子宮内腔で子宮底部のライン(I)を用い、T〜I/T〜Oが50%以上を(部分)中隔子宮とし、50%未満を正常子宮とします。サブ法では、子宮内腔中央部での子宮前璧と後壁の子宮筋層の厚さの平均値をT〜Oの値とします。270名のうち77名で子宮筋腫あるいは子宮腺筋症が存在しました。メイン法とサブ法の一致率は下記の通り。

 

                  サブ法

            正常子宮  中隔子宮  分類不能  合計

メイン法  正常子宮   88       1     10    99

      中隔子宮   75     58       5    138

      分類不能     6       2     25    33

       合計     169     61     40   270

 

また、中隔子宮と正常子宮の方の既往妊娠での流産率に有意差はありませんでした。

 

解説:ESHRE(欧州ヒト生殖医学会)とESGE(欧州婦人科内視鏡学会)は2013年に新しい分類を発表しました。従来からのASRMの分類と比べESHRE/ESGEの分類では軽度の突出も中隔子宮と診断されてしまうことになり、中隔子宮がより多く診断される難点が指摘されていました。本論文は、かつて弓状子宮と診断された方の約半数(138/270)がメイン法で中隔子宮と診断され、約1/4(61/270)がサブ法で中隔子宮と診断されることを示しています。中隔子宮は手術により切除することになりますので、これはよろしくありません(実際本論文の型では既往妊娠での流産率に有意差はありません)。なお、メイン法とサブ法は、子宮筋腫や子宮腺筋症などにより子宮筋層の厚みがうまく計測できない場合を想定して2種類用意したようです。弓状子宮のESHRE/ESGE分類については再検討の余地があります。

 

下記の記事を参照してください。

2016.1.17「子宮形態異常(子宮奇形)の診察法

2015.4.7「子宮形態異常の分類の違い(ASRM vs. ESHRE)

2013.8.30「☆子宮形態異常の新分類