☆不妊治療をお休みしている時の自然妊娠の確率 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

本論文は、不妊治療をお休みしている時の自然妊娠の確率について検討したものです。

 

Hum Reprod 2018; 33: 919(オランダ)doi: 10.1093/humrep/dey051

要約:2009〜2012年に、1年間妊娠を目指し妊娠に至っていない原因不明不妊あるいは軽度男性不妊602組を対象(妻年齢18〜38歳)に、ランダムに3群に分け、その後1年間の追跡調査をしました(INeSスタディー)。①刺激周期体外受精で単一胚移植3周期、②自然周期体外受精6周期、③刺激周期人工授精6周期。このスタディー全体で342件の妊娠(心拍確認かつ妊娠12週まで確認)が成立していますが、スタディーの開始前、スタディー間、スタディー終了後に77件(23%)の自然妊娠が成立していました。この77件について、Coxモデルを用いて向こう1年間の累積妊娠率を計算したところ、24.5%となりました。なお、原因不明不妊とは少なくとも片側の卵管が通っており、排卵があり、精液所見が正常なものとし、軽度男性不妊とは総運動精子数が300〜1000万としました。年齢別の累積妊娠率は下記の通り。

 

      不妊期間

年齢  1年  2年  3年 

18歳  35% 33% 31%

23歳  33% 30% 28%

28歳  30% 28% 26%

33歳  28% 26% 24%

38歳  25% 24% 22%

 

解説:自然妊娠の確率を求めることは容易ではありません。特に一般集団の場合には大雑把な統計しかできません。本論文は、不妊クリニックを訪れた夫婦が不妊治療をしていないときに偶然妊娠した際のデータを前方視的に検討し、自然妊娠率を計算したものです。38歳までの女性であれば、不妊治療中に治療以外での自然妊娠が1/4の方で認められることを示しており、治療を一時的にお休みすることは、マイナスではなくプラスの効果もあることを意味しています。このような場合には、私が常々感じている「ニュートラルな気持ち」が働いている可能性があります。

 

下記の記事を参照してください。

2014.5.29「☆☆妊娠には「ニュートラルな気持ち」で!