ー鳥栖の遺伝子

 

2023年10月26日 名古屋グランパスvsサガン鳥栖 

1−1(‘89 富樫敬真)

 

2試合連続の引き分けとなったこの試合だが、

サッカー的に語ることができるのは山崎の退場まで、か。

 

福田のCBはやはり前に運ぶことを意識した配置。

後半に手塚を入れたのもそう。

 

ただし、この雨の中のピッチ状態で思うように行かなかった。

そこはシンプルに「そこまでの技術がなかった」としか言えない。

菊地を偽SBにしつつ、原田、福田、山崎の3人でうまく守りながら前に運びたい。

GKパギもいつも以上にボールに触る。

意図は分かるが、細かいミスやパスのズレでスピードが上がらない。

どれだけ剥がせてもスピードが上がらなければ相手は守り直せてしまうものだ。

 

「剥がさないと」シュートまで行けない鳥栖はシュートが少なく。

「剥がさなくても」前線だけでシュートまで行ける名古屋はシュートが多くなるのは必然だった。

ミドルはやむなしとして、ユンカーのシュートにいくまでの駆け引きに勝負できるCBはいなかった。

その上退場者を出して0−1でリードされる展開。

普通ならばこのまま失点を重ねるか、0−1でクローズされた、だろう。

 

「鳥栖の遺伝子は息づいている」

 

たとえポゼッションに移行しようとも、

配置や5レーン、偽SBなど今風のことを取り入れようとも

シンプルに局面で「頑張る」

 

 

 

 

ただそれだけのことがどれだけ大事か?を思い知らされた試合となった。

そしてそれこそが鳥栖の遺伝子なのだ、と。

 

パギがチャレンジし続けたことは賛否あって良いだろう。

しかしあの姿勢こそが、劣勢にあっても「何か起きるんじゃないか?」

そんなドキドキが最後まで続いた要因だと思う。

 

それは名古屋も同じことが言えて、このまま何もなく終わるかなーって試合ではなかった。

もう1点取れそう、スペースありそう、相手GKミスしそう。

そんなカオスが充満したピッチでは引いて守ると事故が起きる怖さもあって、

名古屋は前に出ることをやめなかった。

特にCBや後ろはスカスカ。

 

守備のうますぎるFW小野が引いてからは特にCBへの圧は弱まり好き放題持たれた。

 

ここに罠があった。

 

持って運んで剥がして、、、

 

そんなことしなくてもユンカー、永井、森島はいつでもシュートに行けた。

しかし後ろが持ち上がり、連携もできてしまう。

攻撃できてしまう選択肢が多すぎるがゆえに、誰に打たせるか?が曖昧となり、

名古屋の攻撃は散発した。

 

鳥栖が狙った事象とは思えない。

鳥栖は必死に戦っただけだろう。

 

だからこそサッカーは面白い。

 

そしてその混乱は鳥栖がカウンターを仕掛ける要因となった。

 

 

なぜ富樫がフリーで抜け出して中央の西川がフリーだったか?

(繋がらなかったけど)

 

なぜあれだけ危険な横山があの時間に1対1になったのか?

(富樫が決めた!)

 

なぜ河原があの位置でフリーで打てたのか?

 

僕には答えることができない。

 

 

カオスという便利な言葉に逃げよう。

そしてカオスとは混乱ではない。

 

サッカーにおけるカオスとは、激情のことだ。

ほとばしる感情。飛び散る汗。

走り抜ける音。風。

 

それらがまるでドラマのようにスタジアムに感動をもたらす。

 

名古屋サポは落胆の夜だったかもしれない。

しかしこれもサッカーの感動の一部だと僕は思う。

 

決して下を向く必要はない。

それでも上位争いをしているチームであることに間違いはない。

 

そしてたまたまサガン鳥栖というチームは

「そういうチーム」を食い破ることに生きがいを見出すチームだった。

 

それだけのことだ。

 

この日、長良川に駆けつけたサポーターは両チームとも幸せだったはずだ。

サッカーの醍醐味が詰まった試合。

 

それはサッカーの質や技術や端々のことではなく、

最後の1分まで何が起きるかわからない。

そんな波乱を感じ続けることができる極上の90分だったのだから。

 

 

改めて、パギ選手、河原選手に敬意を表したい。

繋いでくれているのは鳥栖の遺伝子であり魂だ。

 

それを感じることができたとき、

勝敗に関係なくサポーターは喜び、涙するのだ。

 

もちろんこの日出場した全選手、出場できなかった選手

スタッフ、監督、審判、相手チーム。

全てに感謝しよう。

 

「来年もJ1で戦える」

 

 

これは決して当たり前のことではない。

 

全員で!

 

本当に文字通り全員で勝ち取ったことなのだ!

 

 

今日は大いに誇ろう!

 

 

僕たちの大好きなサガン鳥栖を。

この街の誇りを。