氷艶 破沙羅2017 義経物語まとめ 第二部 | 高橋大輔選手と共に momokikuのブログ

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◆第二部 第一幕 闇の国の宴の場

暗闇からまずは松明を掲げた悪の手下たちが出てきます。彼らは眼光鋭く観客席を見渡して敵がまだ潜んでいないか見張ってるようです。

 

その後、幕の中から弾正たちを乗せた演舞台が登場してきました。

義経達を撃破し、氷の国を手中に収めた仁木弾正と岩長姫は祝いの宴を催しています。悪人どもは飲めや歌えやの大騒ぎ。異国からも韃靼人らが駆け付けて、祝いの舞を奉納します。

踊れ踊れ韃靼人 風のように 蝶のように 舞え美しく ♪

ここでは先ごろまでプリンス所属だったスケーターたちが登場しておりました。軽快な音楽に合わせてのエキゾチックな踊り。ここにペアやアイスダンサーも参加していたらさらに贅沢な空間になったでしょうね。

宴の席ですから出し物にいろんなバリエーションが加えられると面白いですよね。

私は久々に生で見ることになる庄司理紗さんを探していたのですが、遠目にはちょっとわかりかねたのが残念です。でも女性陣ほんとおきれいでした。

韃靼人の皆様はとても楽しそうでしたし、闇の国も悪くない・・なんて思いそうになりましたよ。

そんな華やかな場に誘われて、歌舞伎の国からもその名を知られた「悪の峰々」がやってきました。

酒呑童子に石川五右衛門、蘇我入鹿に地獄大夫。

 

「皆々方、よくぞ参られた、ささ、さっそく盃を」と喜ぶ仁木弾正に4人は祝いの言葉を述べ、「まずは我らがめでたい席の肴(さかな)になりましょう」とそれぞれ歌舞伎舞を披露します。

 

楽は私の席のすぐそばで蘇我入鹿が舞ってくれたので、その時に初めて歌舞伎を観ている実感がわきましたね。

例え歌舞伎座を訪れたとしてもこんな風に役者さんの舞をすぐ目の前で見られることなんてまずないでしょうし、大変に贅沢な鑑賞をさせていただいてるんだなあって興奮しましたよ。

最後は悪役のお約束?口をかああっと開いて真っ赤な舌を見せつけて見得をしてくださったのにも感動しました。

 

注目したのは地獄大夫。打掛には地獄絵図ではなく松が描かれてて、ちと当てが外れたのですが、女形らしく何度も反り返りを見せてくれました。あの重そうな衣装で踊るのは歌舞伎役者さんにとってはお手の物なんでしょうが、最後はそれでスケートまでしちゃうんですからね。皆さんすごかったなあ。

地獄大夫は舞終えた後に周りの手下たちに自分の団扇を見せびらかしたりして、可愛らしかったです。

 

その団扇に何が描いてあるのか知りたくて双眼鏡で覗いていたので、私ったら2回ともいつの間にか阿国が出現するシーンを見逃してしまいましたw

 

ちなみに扇には「がしゃ髑髏」が描かれてたのですけどね。遠目にはそれが茶トラの猫に見えたんです(^^;

 

私が気が付いた時にはかなりリンクの中央付近に近づいていたのですが、まあ実際そのくらい静かに登場してたってことですね。

傘の陰、ややうつむき加減にしずしずと歩く姿に初公演から注目できた観客はあまりいらっしゃらなかったでしょう?

 

酒宴の場に突然現れた一人の女性。地獄大夫はその姿を見てあまりの美しさに「いやーー!」と羨望と嫉妬が入り混じった叫び声をあげます。

地獄大夫の悲鳴に何事かと出てきた一同も現れた阿国のたおやかな風情に圧倒されたようす。

 

「これは男姿の遊女(おとこすがたのあそびめ)か。面の下、秘めたる色香の面白きかな」

 

好色な仁木弾正は興を覚えて、早速舞を舞ってみるように命じます。

 

「さあ、さあ」と石川五右衛門が壇上に上がるように促し、少し戸惑う様子を見せつつも阿国は宴の中央に進み出て台に登ります。

 

この仮面がキツネ面なのは義経千本桜に登場する狐忠信に因んでいるのだとか・・・

髪を後ろでお団子に結っているのは唐輪髷(からわまげ)という当時の遊女のヘアスタイルを再現したものだそうで、おかげさまで雑学がまた増えました。

 

最初はゆったりとした調子の日舞から始まります。

氷の上でも滑らないように開発されたスパイクのついた足袋だったので、完璧なすり足とは参りませんでしたが、3月に初めて舞の手ほどきを受けたとは思えないほど型ができてました。

 

優雅に上に手をかざして台の上をめぐります。ここは尾上菊之助さんの振り付けで最初に習っていた箇所ですね。

 

花のほかには松ばかり 

花のほかには松ばかり

 

この時使われているのは「京鹿子娘道成寺」 乱拍子と言う足を踏み鳴らす踊りで能からきています。

詳しく書かれたものを読むとつまり「白拍子が男舞を披露している」という設定なんですって。

能は男のものですが、それを女が演じている。女性(白拍子)が男である能楽師を演じている様子を、男つまり歌舞伎役者(女形)が演じている。という意味。

あああややこしや、ややこしやーー

音楽が静かになり、照明も青く変わり、白いスポットライトが阿国を照らします。このとき阿国は仮面を取ってゆっくりと一回りしてみせるのですがが、これは観客にだけ自分の正体を明かしてるという演出なんですね。

再度仮面を付けようとして落ちる回もあったりして関係者の方々も毎回ハラハラしてたのかも。

壇上の人物が誰か分からなくても歌舞伎を知ってる人にはここで「ははーん」と察しがつくようになってるわけですね。

 

 

 

その後どんどんと踊りは激しくなっていきます。最初ネタバレを読んだ際は「ダンス」と書かれてたし、東京ゲゲゲイの振り付けだというので、てっきりそのあとヒップホップの音楽に変わっていくのだと思っていたら、最後まで三味線と鼓でした。

「道成寺」と「鏡獅子」「二人椀久」の3曲をつなぎ合わせたものだそうで、なんとこれを聴いた大ちゃんのほうからヒップホップでやりたいと提案され、東京ゲゲゲィさんの名前が挙がったというのですから驚きですよね。

それと知らなくても開いた口が塞がらないとはこのことで、その後は阿国狂乱と名付けたいほどの素早い動きの連続です。

どうやら4分ほどの踊りだったらしいのですが、

普通あれだけ激しく動いていたら途中で呼吸が続かなくなりますよ。

なのに最初から最後までまったく動きが鈍ることなかったんです。

改めて言いますが、これほんと人間技じゃない。いったいどういう鍛錬を積めばこんなことができるのか?

 

大ちゃんと言えば指先まで美しい手の表現ですよねーそれがあまりにも早すぎて見えないくらいなんです。

超高速で腕や手を振りつつ、ところどころでピタっと留めが入るところもお見事。

女性的でもあり、男性的でもある不思議な舞。

 

縦に手叩いて手拍子を促すような振りもありましたが、悪の面々のみならず、観客もあり得ないものを目の当たりにしているといった感じで、見とれるばかり。終わる頃にはもうひたすら拍手していましたけどね。

 

もともと阿国は安土桃山時代に生まれた出雲大社ゆかり神官の娘で、そもそもは神社に寄付を募るための奴舞を披露しつつ全国行脚していたのだそうですね。だから聖性と俗性を併せ持った存在だったようです。そのうちに男装して、遊女と絡むようなセクシーな踊りを披露するようになったのだとか。

それが歌舞伎の始まりだったのだとか言われています。

 

その阿国の舞を舞わせてみようと考えた人は素晴らしいですね。聖も魔も降ろすことができる大ちゃんの事をよくご存じだと思います。

 

 

義経が付けてるのが狐面なのは「義経千本桜」の「狐忠信」が元になってるようですね。

鼓の皮になった親を慕う子ぎつねが、義経の臣下、佐藤忠信としてその鼓を持つ静御前を守り続けるというエピソードです。

 

なので阿国の舞にもこうした指先や動きで狐らしさを表現する振り付けが出てきました。

目にも止まらぬものすごい早さでしたが、このまま上を向いて、鼓のポンっという音を「コン」という鳴き声に見立てて、首をコクンと振り、正面を見るという動きが印象的でした。

 

かぶりつきで見ていた悪の面々もこれには大喝采。仁木弾正も台を降り、のしのしと傍にやってきて、自ら盃を勧めます。大きな酒杯に阿国が口を付けたところ「今宵はお前を抱いてやろう」と迫ってきました。

 

正直これだけ目立てばもうごまかしようがありません。するりとかわして返杯し、弾正が油断したところを扇に仕込んだ刃で刺すという作戦だったんですが、その前に腕を取られてしまいます。

 

右腕を取られて引っ張られるのを左袖で顔を隠しながら、膝を曲げて体を縮め、逃げようとするんです。これを最初に見た方が大ちゃんが演じてるとはわからなかったのはこうした動きが本当の女形のように見えたからでしょうね。私も見ていて驚きました。

 

いやいやそれだけはご勘弁をって、あくまでも女性を装って拒んでみせるところがとっても蠱惑的で、これじゃあますます逆効果。

無理やり胸の中に抱え込まれて、「顔を見せよ」と面を剥がれてしまうんです。

「お、お前は!義経!!!」

あちゃあ、女装いや男装と踊りが完璧すぎてとんでもないことになってしまいました。義経はあわてて振りほどき、抵抗しますが、体格差がありすぎましたね。しばしのもみ合いの後、片袖を引き抜かれて朱の着物もあらわにのけぞることになるのです。

結局のところ仁木弾正と手下どもに狼藉を働かれ、壇上から蹴り落される義経。

その時の転がりっぷりにためらいがないので、ケガしないか?痛くないのか?

(痛いに決まってますね)とひやひやさせられました。

 

すでにボロボロにされた様子で一人で立ち上がることすらできない義経を悪人どもが左右から抱えます。

 

「義経め、とっとと逃げればいいものをここで会ったがお前の最後、頭と胴との泣き別れだ。覚悟しろ!」

 

と奴江戸兵衛が刀の柄に手をかけますが、それを制して弾正が

 

「善人奴等には数々の恨みがある。ここで簡単に殺してしまってはつまらん。ここは岩長姫に引き渡してやろう。義経をなぶってなぶりぬいて、木偶人形にしてしまえ。我々は向こうで宴の続きと参ろうぞ。」

 

 

と、岩長姫に後を託して立ち去ります。

 

つまりはまたまた悪の大勝利?氷の国どころか、義経は自分すら守れず大ピンチです。

あーあ単身で敵陣に潜入なんて無茶するからーー・・・

 

このあとどうなってしまうんでしょうーーガーンガーンガーン

 

 

◆第二幕 第二場 岩長姫寝所の場

 

あらすじを書くにあたり、このタイトルを読んで初めてあの場面は岩長姫の「寝所」だったと知り、ちと動揺してた私です。

まあそのあたりはあまり想像しないようにして。。。。(笑)

 

傷つき、乱れた姿で床にうずくまったままの義経に岩長姫が語り掛けます。

 

 

「義経殿・・・義経殿・・・・其方と話がしたかった・・・」

 

最初はその美しい心を引き裂いて殺してしまおうとおもっていたが、見てるうちにすっかり大ちゃん・・・いや義経の虜になってしまったと告白する岩長姫。

 

そしてそこからの台詞がこれと来たもんだ。

「その麗しき瞳」


「甘い吐息」


「かぐわしい男の香り」


「そなたのすべてが妾(わらわ)を酔わせるのじゃ」

おおおーー岩ちゃん!!!なかーま!我らが同志! わかってるぅーー!

リンクは青黒く沈んだ深海の底みたいな照明でしたが、会場の温度がぶわっと上がった気配を感じましたよ、あの時は。あはは。

会場内に潜む岩長姫とその仲間達の情念がますますやばいことになってまいりました。

 

「さあ参るが良い、私と契りをかわせばそなたは永遠の命を得られる。」

 

永遠の命?・・・悪くないかもーーでも待って、それじゃあ大ちゃんを岩長姫が独占するってこと?

あーー岩ちゃんずるいー、ダメ!絶対に阻止!!絶対に許しませんことよーー

 

私がキーっとハンカチを噛むまでもなく、義経は岩長姫を拒絶し、逃げ出そうとします。

 

仁木弾正のあとは岩長姫、ほんとモテる男は辛いわあ。

 

懸命にかき口説いたのに振られ、何もかも思い通りにならないことに業を煮やした岩長姫はその本性を顕わに巨大化し、妖力で義経を翻弄します。

 

「お前を情欲の海に沈めてくれよう」

 

 

右に左に大きな力で振り回され疲労困憊したところを、魔界に引きずり込まれて、腕を指先でつまみあげられてしまうのです。

もがきあがいてももはや小人状態の義経にはどうにもなりません。腕一本で吊り上げられた痛みに美しい顔をゆがませるのを、岩長姫はうっとりと眺め続けます。

 

だんだんと抗う力もなくなり、ぐったりとし始めたその時どこからか美しい歌声が聞こえてきました。

歌舞伎の国の静御前が異界に連れ去られた義経の身を案じて祈りの舞を捧げていたのです。

 

その愛の力が岩長姫の妖力を封じ込め、義経を捕えておくことが出来なくなりました。その隙に乗じて、義経は岩長姫の宝鏡を奪い、岩に変えられていた、ニニギとコノハナを救い出しともに逃げ出すことに成功します。


南BブロックのS席から観たときは吊るされている大ちゃんはまんま小人のように小さくてもがいているのが辛うじて分かるくらいでしたが、楽は北F アリーナでしたのでこのシーンは絶好のビューポイントでありました。何せこんな風情の大ちゃんがすぐ目の前にいらっしゃるのですから。

 

双眼鏡を覗くと髪を乱し苦しげに仰向く凄艶な美貌がアップで迫ってきます。
嗜虐の闇に染まった岩長姫の蒼い顔と義経の清らかな魂を想わせる白い衣に被虐を象徴す緋襦袢が生み出すコントラストには、
伊藤彦造の武者絵、あるいは伊藤晴雨の責め絵を彷彿とさせるものがありました。

恐らくは製作者の思惑を超えた深い官能、死とエロティシズムの融合がわたしの頭上に吊り下げられていたのです。
つまりはお子さまは見ちゃダメなやつです。

 私はあわてて双眼鏡を外して前に向き直り、あっこちゃんの舞に目を凝らしておりました。

 そう、私はバランス感覚人間なのでメーターが振りきれる前に正常に戻ろうとするのです。

なので放映がしばらくないなら無いと言っておいで欲しかったです。

だったら廃人覚悟でガン見したのにぃ~!!

 後悔先に立たずとはこの事です!

はあー、返す返すもため息でした。

 

静御前の祈りの舞によって岩長姫の妖力から逃れられた義経たち。それを追って岩長姫が髪を振り乱し、鬼の形相となって飛び出してきました。おのれ逃がさぬぞとばかり走り出でて、激しい感情の高まりを表現すべく毛振りします。

なんでも女形の方が毛振りされるのは珍しいんですってね。どうやらこれも染五郎さんの無茶振りだったようです。
なにせスケート靴を履いての毛振りですからね。足を踏ん張れない不安定な状態でして見せるのは相当大変ですね。

もちろん私は生で拝見したのは初めてで、その迫力に感動しました。まあ、髪がちょっとモフモフしてたのはご愛嬌でしたが。

逃げられたと知った仁木弾正も六方で後を追います。氷艶の歌舞伎役最大の見せ場ですね。

楽では大向こうの方々の高麗屋!という掛け声が沢山聞こえました。
そして染五郎さんが滑り出すと共に近くの客席から歓声が上がり、まるでウェーブのようにタイミングよく拍手が沸き上がります。

 

 



歌舞伎ファンとスケートファンの応援コラボレーションは見事でしたよ。もちろん染五郎さんもとても気分良さそうでした。場を観客と役者が一緒になって作り上げているという一体感がありました。

大ちゃんも観客の皆さんと心が通いあう瞬間が一番好きとおっしゃってましたがまさにそれでしたね。

染五郎さんはさらに宙乗りして高さ10メートル近いんじゃないかという天井で、腹部を支点にしてぐるぐると大車輪をして見せてくれました。


いや、アスリートでもないのにこれほど体を張ってくださるとは!
体が一回転するたびに大歓声です。ひたすらすごいなあと感服してました。
見てるだけで手に汗握ります。回りながら空中移動して、最後は逆さまになったまま、かあーと口を開いて幕の後ろに消えていかれました。

いや、こんなことよく6公演もなさったと思います。楽の盛り上がりも最高潮でした。

◆第二幕 第三場 黄泉比良坂岩戸の場

 

ウィキペディアによると黄泉比良坂(よもつひらさか)とは日本神話において、生者の住む現世と死者の住む他界(黄泉)との境目にあるとされる坂とあります。

 

その境目の岩戸の前に横たわる弁慶こと猿田彦の周りを天鈿女命が夫の復活を祈って舞い巡っています。

天地の命の巡りを司る彼女の一途な祈りを聞き届けて、岩戸の中から女神稲生(イオ)が姿を現しました。

 

すると猿田彦は死の眠りから目覚め、「やや、我を蘇りせしは其方か?」と妻に感謝します。

 

女神は猿田彦たちに岩長姫の永遠の命を絶つ古鎌と仁木弾正の妖術を砕く十束の宝剣を授けます。

 

(パンフには仁木弾正の妖術を砕く古鎌と岩長姫の命を絶つ宝剣とありますが、どう見ても実際に使われたのは逆だったので記載違いかと思い、あえて私の記憶に忠実に書いております。間違いでしたらごめんなさい)

 

この時の佳菜子ちゃんの表情はとても真剣で夫の死を悼み、その復活を願う気持ちがよく表れていました。

もともととても表情豊かなスケーターですからプロの素質十分ありましたね。たまたま天鈿女命の役だったのか?この役の話があったから引退に踏み切れたのかどうかは定かではありませんが、佳菜子ちゃんが自身の滑りで開いたのはまさに新しい才能開花への扉だったのだと感じました。

まだ身体能力を十分に維持したうえでの滑りにはとても躍動感があり、しなやかでした。

 

一方猿田彦、武蔵坊弁慶役の中村亀鶴(きかく)さんは氷艶 破沙羅においての歌舞伎の要を担う役者さんでした。台詞回しももっとも歌舞伎本来のそれに近かったのではないでしょうか?朗々としたよくとおるお声でしたが、初心者の私には少しばかり難しくて聞き取れないところも多かったのです。が、それがなおさら歌舞伎のイメージ通りでしたし、弁慶らしい堂々たる風貌で観客を引き込んでいらっしゃいました。

パンフのインタによると亀鶴さんは高橋大輔さんの演技には以前から凄いなあと注目していたそうです。実際会ってみると思ったより小柄だったのでどこにあのパワーが?と驚いたとあります。

 

染五郎さんも同じく「あまりに細いのでびっくりした」と言ってましたね。確かに私も初めて生の大ちゃんを見たときには同じような衝撃をうけたものです。身長体重がわかっていても実際に見るとテレビとのギャップに驚いてしまうんですよね。しかしこの体格差が義経と弁慶、悪役の面々との違いを際立たせてて、ビジュアルバランスがとても良かったと思います。


◆第二幕 第四場 叢雲雷善悪勢揃の場

さあこれで役者は勢揃いしました。

奴江戸兵衛の「弾正様!義経めらが海の向こうに集まっておりまするー」

というような台詞がありましたので、きっとこれは壇ノ浦の闘いをイメージしてるのですね。波間に見え隠れするお互いの船を睨み合ってるという光景なんでしょう。

代々木体育館の南側に義経を大将とする善、北側に仁木弾正と岩長姫率いる悪の軍団が一列となって観客に顔見せした後、内側に向かって対峙します。そしてゆっくりとリンクを巡りながら、悪の軍団はその決意を唱和し、鬨の声を上げます。

 

 

 

悪の軍団の方々が七五調で台詞を唱和してたのですが、私にはあまり聞き取れませんでした。何やらかっこいいぞというのが分かったくらいです。

その後、エブリを見て思い出しました。「破沙羅に咲いて、破沙羅に散れ!」ともおっしゃってました。

 

しかしいよいよ決戦の時!観てるだけでもなんかこう滾ってくるものがありましたね。

最後のほうで「命を惜しむな、名を惜しめ」と言って、その後に続くエイエイオーと3度繰り返すのですが、昼夜両公演ともに私も一緒に声を張り上げたくなって困りました。

大ちゃんウォッチには南がいいと聞いてたので、最初アリーナ北側は残念なお席かしら?と思ってたのですが、なかなかどうして、かなりいい場所でしたよ。この時も悪の軍団の唱和中、ずっと北側に顔を向けてくれてるので、義経になり切ったその凛々しいお顔をとくと眺めることが出来ました。試合前を彷彿とさせる気合入りまくりのいいお顔でした~(≧∇≦)

 

 

 

その間リンクにはDRUM TAOの皆様が登場し、中央で陣太鼓の準備を始めます。

 

◆第二幕 第五場 大海原海上決戦の場

 

ここからはDRUM TAOがチームLabのプロジェクションマッピングとコラボしての生演奏です。

 

もともと太鼓の音は大好きですし、あらかじめ動画で見てすっかりハマっておりましたが、やはり生の迫力は違いますねえ。一打一打がはらわたに響き渡ります。とにかく凄い!かっこいいの一言に尽きます。その音色に合わせてリンクには炎が噴き出し、スクリーンには火山が映し出されます。創世記の地球のイメージでしょうか?やがて冷えてきて落雷とともに嵐が吹き荒れ、炎は波となって渦を巻き、大海原を形成します。

この大迫力の映像はもちろん俯瞰のほうがよくわかりました。

 

 

しかしながら間近に見たときの男性陣の筋肉美のほうにやっぱり圧倒されたかな(笑)

あとで娘も「DRUM TAOの筋肉がー」とひたすらそればかり申しておりましたもの。

 

さすが世界が認める和太鼓演奏集団。音も動きもキレキレです。いやあもうこれを生で拝聴できただけでもチケット代の価値はあったと思います。

 

DRUM TAOの皆様による大迫力の演奏後、彼らはスクリーン幕の前で陣形を組みなおし、リンク上では再び善悪両陣営が対峙します。いよいよ決着をつけるとき、両者は睨み合い、火花を散らします。

 

ブオオオオオオという法螺貝のような音(あの長いラッパのような楽器の名称知らないんです)が会場に響き渡ると同時に義経様の「やああああー」っという合図で善側が一斉に突撃してきます。

 

 

この攻防戦は映画かアニメのようにキャラクターが入れ替わり立ち代わり現れては闘うシーンが絶え間なく続きますから、観てるほうも追いつきません。順不同で記憶に残ったとこだけ書きますね。

 

先陣を切ったのはなんと木花咲耶姫でした。えええーこの物語中最も可憐なお姫様だったのにどうしたん?さては岩長お姉ちゃんに逆切れしましたね?

 

美しく華麗にチームグレーをバッタバッタとなで斬りにし、敵陣中央突破を狙います。

 

 

対するチームグレーの方は氷上で三連続のバック転をなさってました。体育館の床ならともかくここは氷の上ですからね。滑り止め付きの手袋は嵌めてたと思いますが、かなり大変だったのでは?

途中で敵の一人が高いところからびょーんとターザンみたいに降りてくるシーンもあったりして、要所要所でアクションを楽しませていただきました。

 

あっこちゃん演じる静御前と舞ちゃんの木花咲耶姫の共闘は衣装もそうですが目にも鮮やかでした。とにかく動きが様になってて、予想をはるかに超えたカッコよさでした。二人ともアクション系向いていますね。あっこちゃんはSP「キルビル」でもその片鱗は垣間見てましたから驚きはありませんが、舞ちゃんは本当にお姫様役がぴったりのおっとりとした女性だと思ってたのでびっくりでした。

 

しかしながらその二人の前に登場したのは悪役蛸の面々、奴江戸兵衛と鬼佐渡坊です。あ、ご紹介遅れましたが、鬼佐渡坊は歌舞伎の「義経千本桜」に登場する悪役の一人です。

 

この二人、先に弁慶にも打ち勝った強敵設定の中ボスですから、いかにあっこちゃん、舞ちゃんでも敵うわけないよね?って思ったら、ヒロインのピンチに駆けつけるのは当然ヒーロー!瓊瓊杵尊!じゃなくって義経です。

 

この時の登場の仕方がほんとヒーローだったんですよ。のしのしと歩いてくる悪役たちにひるんで後ずさりするお姫様たちの前にすーーっと飛び込んできて二人を後ろにかばい、逃がしてあげるんです。

 

「大丈夫?」「早く逃げて」

 

岩長姫の寝所から逃げ出したときか、もしくはこのシーンでかけられた言葉だと思いますが、それはさすがに現地では聞き取れませんでしたね。いずれにせよ助けてもらった上にこんなこと言われるなんて羨ましいわあ。

 

奴江戸兵衛と鬼佐渡坊はその後チームレッドに翻弄され、相手に切りかかろうしたら慣れないスケート靴でうまく方向転換できず、お互い衝突して相打ちしてしまうという笑いを誘う終わり方でした。これには歌舞伎ファンとおぼしき観客のほうがウケてましたね。

 

スケート靴を履いてわらわらと出てきたのは蘇我入鹿、石川五右衛門、酒呑童子に地獄大夫。

この方たちは氷艶のいわばマスコット的ラブリーキャラクターでした。5頭身くらいのお姿でリンクを周回されてるのがとっても可愛いのですー。つまりゆるキャラって感じ?

でも斬られそうになるとターンしたりして、ちゃんと演技されてましたよ。

 

この方々達をはじめ今度の氷艶キャラはぜひともフィギュア(人形の)にして販売してほしいですね。

ボトルキャップになってたりしたら片っ端から買い集めてしまいそうです。ガチャでもいいですよー。

もちろん義経様、仁木弾正、岩長姫は30センチ以上の大きなサイズで創ってください。特別レアはやっぱり出雲の阿国ですね。

 

四天王の皆様も華やかでした。蛯名さんのバックフリップしかと拝見しましたよー。彰生くんもカッコよかったー。その他の皆様もさすが氷上では水を得た魚ですね。善悪キャラクターが入り乱れる中を猛スピードでスイスイとかき分けながら、華麗な剣劇を見せてくれました。

織田君の瓊瓊杵尊も闘ってたのは遠目に見えたんですが、あまりに大勢出てこられるのでお一人ずつ注目できなかったのが残念です。映像が待たれます。

 

髪を振り乱した妖怪姿の岩長姫に立ち向かったのは弁慶と天鈿女命だったと思います。長袖を振りまわして応戦しましたが、ふわふわと浮かぶようなスケートもこれで見納め、古鎌で妖力を断ち切られ、岩長姫は幕の向こうに逃げていきました。

 

そしてその合間合間に仁木弾正と義経との闘いが挟まれます。二人が対峙したのは3回。

 

他のみんながやってる殺陣はいわば歌舞伎舞踊でした。斬りかかる相手の動きに合わせてくるんとターンしたりしてそれっぽく見せるだけで、実際には互いに距離があり決して刀を交えたりはしません。

危ないもんね。

 

でもこのお二人は全く違いました。最初からマジ本気?ってくらいの斬りあいをしてましたよ。

もちろんお互い距離とタイミングを計ってのことでしょうが、それにしてもこれが大ちゃん初めての殺陣、しかも初共演とは思えないくらいに息が合っていて、その表情と言い、迫力と言いあまりにリアルでした。

迫真の演技とはこのことです。

 

えーとこのブログの読者様のほとんどが大ちゃんの事はご存知でしょうが、念のため申し上げますと、彼はとってもシャイな大人しいお子様でしたから、子供のころにチャンバラごっこなんてしたことなかったんですよ。それどころか倉敷でスケート始めたころは女の子に追い回されるくらい気弱で、ぬいぐるみで遊んでるような男の子だったのです。

 

スケート現役時代はたしかに火花散るトップ争いをされていましたが、そこまで闘争心をむき出しにしたことなんて一度もありません。有言実行をモロゾフに指導されて「金メダルを取ります!」と言わされてはおりましたが。

 

今回だって練習初日には構えた刀をいきなり取り落としていて、こりゃ前途多難、本番までに様になるのか?と一縷の不安がよぎったものです。その上、気慣れない重い衣装に、ポニーテールですからね。

 

が、しかしあの日、私が目の当たりにしたのは巨大な存在に果敢に挑む一人の闘士の姿でした。

 

映像のかけらでもおわかりでしょうが、染五郎さんの剣先が大ちゃんの頭上をかすめてたのだって、ほんの少し避けるタイミングが狂えばお顔を怪我するところでしたからね。

源義経の闘いのイメージそのもののスピード感と空間を跳びすさぶ迫力はスケートならではだったのですが、それだけにとても危険を伴う殺陣だったと思います。相当にお互いの呼吸が合わなければできないところを、それまでまったく異分野で活動されていた二人が、寸分の隙も許されないぎりぎりのところでせめぎ合ってるのは目を疑うような光景でした。

 

 

小柄な義経はやはり体勢不利、幾度も剣を結ぶも力で押し切られ、とうとう自分の刀がポーンと弾き飛ばされてしまいます。

 

そこですかさず弁慶が後ろから恭しく十束の宝剣を差し出します。

 

それを肩越しに手を回し、敵を睨み据えたまま、鞘から後ろ手に引き抜く大ちゃん、いや、義経様のかっこいいことったらあああああ

あああもおおおーー!!一刻も早くBR販売してくださいね!ここんとこは、1日中リピしますからーーー!!消耗に備えて2枚買いますから~~

 

リンクにはとうとう義経と仁木弾正二人だけとなり、大将同士の一騎打ちとなります。それはまるでこれから本当の果し合いが始まるようでした。

 

染五郎さんは歌舞伎を未来につなげるために、大ちゃんはこれからのスケーターが恒久的に活躍できる舞台づくりのために、すべては「夢」のために。

 

互いの背中にそれぞれの重みを背負う緊迫感がありました。

己が傷つけられることになんの躊躇もせず、相打ち覚悟で全力で相手に立ち向かう、恥じらいもためらいも一切の妥協もしない、これが演劇であることに逃げない、真っ向真剣勝負の男の闘いがそこに繰り広げられていました。

 

 

 

心優しく、ときに優柔不断にすら見える青年が、彼を心から信頼し、任せきる人間に出会ったとき、そして才能がもうひとつの才能にぶつかったとき、異能の方々との火花散るガチンコ勝負となったとき、たぶんご本人にもどこから生まれるのか計り知れない、特別な力が湧き出すのです。そしてまだファンですら見たことのない姿に変身させるんです。

 

まさにヒーローそのものじゃないですか?

 

 

いくらお芝居とはいえ、これだけやられたら死んじゃってるよなってくらい深手を負いつつ、ふらふらになっても義経は闘うことをあきらめません。仁木弾正も隙あらばとどめを刺しに来ます。

 

 

突き出した宝剣で弾正を刺した瞬間、義経もまた返り討ちに合い、致命傷を受けます。片膝をつき、己に刺さった刀を握りしめて尚、その目は爛々として弾正を睨みあげます。

 

 

その時の「ぐぉおおお」と唸る大ちゃんの肉声は私にも聴こえてきました。到底演技とは思えないほどの声でした。

 

初回から22日昼公演まではここで最後の力を振り絞った義経が立ち上がり弾正を袈裟切りにしてやっつけるという展開だったようですが、楽は違っていて、このあとなぜか弾正は宙づりになります。

 

女神稲生が天界から姿を現していて、義経に加勢すべく弾正の力を奪ってその体を浮かせたように見えました。

 

不思議な力に持ち上げられてもがく弾正に向かって飛び上がった義経はみごと一閃、悪の大将を斬り、空中でとどめを刺します。

 

天に女神、宙に弾正、地に義経。この圧巻のラストシーンは世が世なら絵師たちがこぞって浮世絵にしたことでしょう。そしたら私もかわら版屋になって、一枚500円くらいで全国行脚しながら売りまくりたいですーー!

 

さあ買った買ったーー!!

 

◆エピローグ

 

こうして物語「破沙羅草紙」は幕を閉じました。お伽話の巫女たちが再び現れて子供たちをもとの世界へと送り届けます。善も悪もいなくなり、みな魔法が解けてもとの歌舞伎役者さんたちとスケーターズに戻ってフィナーレです。

 

観客は総立ちのスタンディングオベーション!沢山のバナーが掲げられ、スケオタ、歌舞伎ファン、タオファン入り混じっての大歓声のなかとても嬉しそうに手を振る出演者たちの姿はやっぱり神々しく見えました。

染五郎さん楽のご挨拶第一声は「ほんとに楽しかった!」でした。これには会場中のみんなが一斉に頷いたと思います。

続いてしーちゃんのご挨拶、そして大ちゃんは感謝の言葉で終わらせようとしたところ、もっと話して!ってばかりにみんな引いて行っちゃって、「えーー?ちょっとみんな、ちょっと待って(置いてかないで)って焦るところがいかにも大ちゃんらしい幕切れでした。ともあれ私たちはこうして新たなエンターテイメントの生き証人となったのです。

 

周回が終わるとみなスクリーンの前に集結するんですが、昼夜公演どちらも子供たち、特に小さな男の子達は大ちゃんのところに寄ってきてたのですよ。あーなついてるんだなって思いましたが、考えてみれば大ちゃんはこの物語のヒーローなんですもんね。そりゃ小さい子は憧れるよねー。

これでほんとのアカレンジャーになれたね、大ちゃん。

 

 

楽公演ではまず織田君がお手本みたいにしてシングルアクセルを跳んで、さらにもう一度織田君、そのあと子供たち、舞ちゃん、それぞれが1Aを跳んだあと、最後大ちゃんも促されて1A。とっても可愛らしいジャンプ大会でした。

大ちゃんの衣装の裾がひらりと舞い上がり、美しい「婆紗」となったところでこのあらすじも終わりです。

 

※この後は思い出した小ネタを

 

※楽公演、弾正と岩長姫がふたりでリンクを練り歩くときは昼公演よりもさらに観客に目線を送って大いにアピールしてくださいました。この時のいかにもディズニーぽいファンタジックな雰囲気はとっても楽しかったー。

 

※蛇髪姫のガニまたに足を開いてぴょんぴょん跳ねるような動きやらメラメラと指を動かして見せるところはついつい真似したくなります。というか休憩時間、みんなで真似してました(笑)

 

※22日の昼公演フィナーレが終わり、みなさんが幕の向こうにはけたあと、鳴りやまない拍手に応えて笑也さんがアイスホッケーのクラブを掲げて挨拶してくれました。

岩長姫とホッケークラブ、なぜか妙にマッチしてました。で、その後ろに幕の左側から右に横切る大ちゃんの姿が見えたんですが、もしかしてはける方向を間違えたのかしらーー??

 

「凄い人たちが集まって凄く無理なことをすると凄いものが出来上がる」

 

染五郎さんのこのご挨拶に会場全員が納得したと思います。

当たり前かもしれませんが、でもそもそも凄い人たちが集まること自体が難しいのですよね。

沢山の無理に無理を重ねて、出演者、そして私たち観客をここまで導いてくださった染五郎さんに感謝します。

 

美しい夢をありがとうございました。いつかまた再びお会いできるのを楽しみにしております。

 

 

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