今日も猛暑ですが午前中の涼しい時間に少しは話を進めたいと思います。
私の記憶力では台詞とかあやふやで間違ってるところも多いので、自分で読んでてもあれ?おかしいぞって思いますが、そのあたりはだいたいこんなニュアンスだったということでご了承くださいませ。
さて第二部の幕開けです。
第二幕第一部 浜辺の近くの貧しい村
始まってもまだ照明が明るいままの会場にそれぞれ打楽器を手にしたキャストの皆さんが入場し、アリーナ席の通路にずらりと並びます。
目の前の通路に海賊の一味が現れてくれたのはうれしかったですよー。太鼓だけではなく、片手桶とか水桶とか、漁村の人々が思い思いの生活用品を持ち寄って祭りを盛り上げてる感ありました。皆さんすっごい笑顔で観客とも目線を交わしてくださったり、ちょっと絡んでみせてくれたり祭りだ祭りだわっしょいわっしょいって一気に場もヒートアップしていきました。
そして一斉に打ち鳴らされる太鼓に出迎えられてリンクに登場したのはMTOFUJI率いる太鼓奏者の茂戸藤 浩司さん。
船を模した櫓の上で勇壮な演奏を披露してくださいました。
なにせ私はこの方の生演奏を心から楽しみにしておりましたし、お姿を見たときには第二部への期待もあいまって大興奮でした。
あとで聞けば海賊の船長さんという役だそうで、たしかに容貌がそのまんまイケてらっしゃいましたわ
そして茂戸藤さんと入れ替わりに歌いながら入ってこられるのが柚希礼音さんが演じる海賊の長、松浦です。
第一声からわーお!!って心臓が高鳴りました。やっぱり生だと声の迫力が違いますねえ。私はこの年になってもまだ宝塚って観たことないんですよね。だからこんな尊いものを私なんぞが拝見していいんだろうかと恐縮しちゃいますよ。
前回の歌舞伎の方々の四天王の舞を拝見したときもそう思ったんですけどね。だって皆さんがあんなに憧れてらっしゃる方なんでしょう?それを生でこんなに近くでって、いやなんかありがたさが勝りましたね。存在が尊い!
まあ初めてアイスショーを見たときもスケーターに対して同じように感じたものですが、やっぱ直接浴びて認識できるオーラってありますよね。
初めて拝見する柚希礼音さんはともかくスケールが大きい人。これが元宝塚のトップスターさんなのねえって、すみません、お芝居そっちのけでまず佇まいに見ほれちゃいました。
衣装とかヘアスタイルの印象も強かったのですが実際に体つきもかなり大きくていらして、まさに美丈夫ってキャラクターでした。さすが海賊の長!頼もしいわあ。
普通劇場ってどんなに大きくても客席が舞台の正面にあるじゃないですか。一方スケートリンクは広さもそうですけど前後左右あらゆる方向から見られるわけで、しかもほとんどの観客が演じ手の頭の上、かなり上方からご覧になってるんですよね。
長道を演じた浪岡一喜さんもパンフレットの中で語っていらっしゃいましたが、いつもの芝居、いつもの動きでは伝えるのは難しい。
そんな中で登場した瞬間、あの大きな横浜アリーナをオーラで覆いつくされたのはさすがです。
このときに松浦が歌う、「海賊の祭りの歌」が私はとってもお気に入りでして、その割に歌詞はうろ覚えなんですけど・・・
ともかくこれさえ聴いていれば一晩中でも踊っていられる自信あります!あはは!
歌えええーー!踊れええーー!!今日は年に一度のーま・つ・り・だ!!♪
柚希さんはダンスも素晴らしいとのことで私もあれからファンの方に紹介された動画などを拝見したりして、本当ならもっとガンガン踊っていらっしゃる姿も見せていただきたかったのですが、何しろ今回の役は貫録ある海賊の長ですからね。それにスケート靴のハンデもあるし・・・
ですがスケート初心者とは思えないくらい足元に安定感があって自信に満ちているように見えました。そう見せるだけでも結構大変ですよね。
というわけで踊りの担当は村上佳奈子ちゃん。
彼女のスケートも久しぶりに拝見しましたが相変わらずキュートでそれこそ「咲風」の名にふさわしく風のようなスピード感は健在でした。
氷艶ダンサーズの皆さんともどもリンクをめぐって松浦の力強い歌声に負けないくらいのパワーを発揮してみせてくれましたよ。
歌のラストで松浦の周りを楽し気にくるくると滑って回ってるのは可愛かったなあ。
で、そんな楽しい宴のさなかに南東のSAのすぐ目の前、リンク際に設けられた三つの台の中央に大ちゃんこと光源氏がひそかに登場してスタンバイされるわけなんですけどー
まあこれだけは言っておきますが、氷艶をご覧になるほとんどのお客さんは大ちゃんファンはもちろんのこと舞台慣れしていらっしゃって、演技の邪魔をするような、雰囲気を壊すような奇声や行動は一切なさらないし、素振りもみせませんでしたからね。
この時も目の前に大ちゃんがいても身じろぎもせずお芝居に集中されているのはさすがでした。
第二場 藤壺の部屋から弘徽殿の部屋
それから数か月が経ち、光源氏がいなくなった宮廷では弘徽殿とその取り巻きによる恐ろしい圧政が始まっていました。
危険を察知した頭の中将は人目を忍びながら藤壺の部屋を訪れ、都を離れるように説得します。
「藤壺様どうかお逃げください!弘徽殿たちがあなた様と若宮様のお命を狙っております。」
「若宮を?若宮はこの国の世継ぎですよ。まさかそのようなことが・・・」
にわかには信じがたい様子の藤壺。が、ちょうどそこに弘徽殿の使いがやってきます。
「藤壺様、弘徽殿の女御様がお呼びです。若宮様もどうぞお連れくださいとのことでございます。」
「・・・・・わかりました。参りますとお伝えください」
「はい、お待ち申し上げております。では・・・」
弘徽殿の使いの何かを含んだような物言いにただならぬ気配を感じた藤壺は都を離れることを決意したようです。
一方、何度呼び出しても一向に訪れない藤壺に弘徽殿は苛立ちます。
「なぜだ!!なぜあの女は私の元に来ない!!!」
長道は怒りをあらわにする弘徽殿をなだめにかかります。
「まあそうご案じあそばされるな弘徽殿様。源氏が死んだ今、あとは若宮さえいなくなればこの国はあなたの物です。」
「そして私はあなたが欲しい。あなたの心が・・・」
長道は弘徽殿に口づけようとしますが、思いがけず激しく拒絶されます。
「下がれ!無礼者!!私が従うのは朱雀帝だけじゃ!私の心は朱雀帝のもの!」
その時弘徽殿の心に浮かんだのはまだ幼い朱雀君の姿でした。
「おいで!私のもとに。さあ・・・」
弘徽殿は腰をかがめ腕を広げて朱雀君を抱き寄せようとしますが、母の顔を見た朱雀君は踵を返して逃げていきます。
すると弘徽殿の形相が瞬く間に変わり、幼い我が子を食らわんばかりに追いかけます。
人としての幸せな成長を阻害してでも、我が子を思うままに支配し、たとえ千切れてもその手を離すまいとする執着の塊、
我欲に狂った浅ましい母親の姿がそこにはありました。
(荒川静香さんのスケートシーンは三回あり、いずれも弘徽殿の禍々しい内面、心象風景を表すものでしたけど、この時の毒親っぷりが一番恐ろしかったですよ。実際に幼少時代の朱雀君をスピードスケートみたいな前かがみの低い姿勢を保ったまま、細かく裂かれた袖を黒い炎のようにたなびかせながら追いかけるんです。初演ではてっきり若宮を殺そうとしてるのかと勘違いしたんですけど、あれが我が子、朱雀君だと気が付いてぞっとしましたね。
親の盲目的な偏愛の恐ろしさをあれほど視覚的に表現したのを観たのはこれが初めてかも。これはもうフィギュアスケートならではです。
相手はまだノービスの子だと思うのですけど、わざと軌道を大きくとって回り込みながら後を追うのでかなりスピードはあるのですが追いつきはしないのです。そのあたりがしーちゃんすごくうまいんですよ。まるで小動物を獰猛な獣が狩りたてているよう。
朱雀君を演じた中田君があとで夢に見るんじゃないかと心配するくらい怖かったです。
やっぱフィギュアスケートと怪談って相性がいいんじゃあないかとw
だってほら足のない幽霊みたいにすーーっと移動できるじゃないですか。
回り込んで突如目の前に現れたり、ぐるぐる取り囲むようにまとわりついたりっていうことがCGなしにできるんですよー。
なので大ちゃんにはいつか吸血鬼か、妖怪の役やってみてほしいんですよね。あ、「四谷怪談」・・・・いやあれは私には怖すぎるのでもうちょっとファンタジックにロマンティックに薄めたものをぜひって思います。
里見八犬伝やるなら玉梓(たまづさ)の怨霊はぜひしーちゃんでお願いします。
第三場 牢獄
我が子に心めぐらす弘徽殿がふと我に返ったとき、そこには母親を冷ややかに見下ろす朱雀帝が立っていました。
帝とはいえ、権力の中枢は母親とその側近たちが握っており、実質自分は飾りも同然。朱雀帝は母の支配を疎ましく思いながらどうすることもできない苛立ちを感じつつ、その慰めを捉えた紫の上に見出そうとしていました。
彼女の心さえわが物にできれば、きっと何かが変わる。彼女さえ私を愛してくれたら・・・
陰謀渦巻く宮中とは全く無縁の世界で、ただただ愛で育てられた無垢な少女が朱雀帝には眩しいほど美しくみえるのです。その光に吸い寄せられるように今宵も自然とその足は紫を閉じ込めた牢獄へと向かいます。
見張りに鍵を開けさせて中に入り、そっと抱きしめてなんとか心通わせようとしますが、紫はまるで小鳥のようにその腕をすり抜けて外へと逃げていきます。見張りを制してあとを追う朱雀帝。
紫の前でまるで家臣のように腰をかがめ、その愛を懇願するのです。
(ああどうか愛しい人よ。そんなに私を嫌わないでおくれ。お前を傷つけるつもりはないのだよ。お前が願うのならどんなことも叶えて上げよう。私のところに来てくれたら唐から天女のような羽衣を取り寄せて着せてあげよう。お前が見たこともない美しい御殿を建てて住まわせてもあげよう。庭には孔雀を放し、錦の鯉が泳ぐ池とそこに流れ込む滝を造ろう。一年中花が咲き乱れ極楽浄土とはかくなるものかと後のち伝わるほどの立派な屋敷にしてあげる。)
この場面の二人にはまったく台詞はありませんが、まあたぶんこんな感じで口説き落とそうとしたんでしょうね。
宥めすかすようにしながら精一杯自分の誠意を見せようと振る舞う朱雀帝に紫もどこか和らいだ様子、二人の滑りは少しずつ同調ししていきます。その間はまるで朱雀帝が甘い言葉をささやき続けてるかのように見えました。
(どんなことでも私の願いを叶えてくださるの?)
(ああそうだよ、愛しい少女よ。何でも、どんなことでも!私は帝だ、私にできないことはないのだよ。)
(じゃあ光源氏様を探して!あの方の元に私を連れて行ってください!!)
(!まだお前はそれを言うかっ!!)
そんなやり取りがあったのかなかったのか・・・朱雀帝は嫌がる紫を抱きすくめ、無理矢理に唇を奪おうとします。が、思い切り突き飛ばされて倒れます。切れた唇を拭って己の血を見た朱雀帝は逆上し、紫の手を引っ張って引きずるようにしながら元の牢に放りこみました。
(お前がその気ならもう一生この牢からは出られないと思え!ここで野垂れ死んで源氏の後を追うがよい!)
とか言ったんでしょうねたぶん。可哀そうに紫は崩れるようにして牢の隅にうずくまり泣き伏してしまうのでした。
その様子を悲し気に見つめるもう一人の女性がいました。朧月夜です。嫁いだものの朱雀帝にはまったく振り向いてもらえず、寄る辺なき浮草のように身を処す場所もない姫君。今もまたただならぬ様子の朱雀帝に声をかけることできずうつむくのみでした。
(このあと鈴木明子さんがソロで滑ります。今回は破沙羅と違い、名前の通りかなり影の薄い役どころではありましたし、スケートを披露するのも2回だけだったのですけど、この時の曲も大変綺麗でしたし、たおやかでしっとりとしたあっこちゃんのスケートが物語の優美なアクセントになってたのは間違いありません。
このお話誰も救われないっちゃーそうなんですけど、唯一朧月夜の存在に朱雀帝の支えになっていくであろう未来が伺えるんですよね。)
つづく
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