J side




戸惑う俺と目が合った翔くんは

悲しげな瞳を見せると、それを隠すように

直ぐに俺の首筋に顔を埋めた。



「・・・混乱させてごめん。

男の俺に好かれたって気持ち悪いよな。」



絞り出されたような声は

苦しそうで、か細く少し震えていて



「友達の癖に、傍でそんなこと想っててごめん。

もう潤の前に二度と現れないから、今だけは俺の事、拒絶しないでよ。」

「翔くん・・・」

「約束する。それ以上は何も求めないから、俺の事なんて記憶から消し去ってくれていいから、・・・もう少しだけこのまま居させてくれ。」



諦めと懇願をごちゃ混ぜにした

悲鳴にも聞こえた。



いつもの翔くんらしくない

少しだけ頼りなくも見えるその姿に

あろう事か俺はキュンとしていた。




「翔くんさ、そんなに俺の事が好きだったの?」

「・・・うん」

「・・・っ!!」



こんな可愛い「・・・うん」今まで聞いた事ない。


素直な翔くんに、またまたキュンキュンする。




混乱はしている。

この想定外の状況に。


でもね、それは嬉しい混乱なんだよ?

俺だって翔くんが好きなんだから。


ただひとつの疑問点を除けば。




「そんなに俺を好きなのに、何で彼女なんて作ったんだよ。」



俺も好きだけど、彼女も同じくらい好きとか言い出したら、さすがの俺も翔くん突き飛ばして帰ってやる。



「あれは嘘だ。」

「・・・嘘?!マジで言ってる?」

「マジで言ってる。」

「はぁー、何でそんな嘘ついたの?」

「ごめん、俺にも色々思うとこあって・・・。

でも本当に彼女なんて出来てない。」



意味わかんねぇー。

じゃあ俺が失恋したと悲しんで泣いてた日々は

無駄だったって事じゃん!



「あのさー、そんな嘘つくからややこしく・・・」

「彼女なんて欲しくない、ずっと潤が好きだった。」

「あ、うん。それは、ありがとう//」



あー!もう、無理。

今日の翔くん本当に可愛いんだけど。



「っ、ごめん!俺また余計な事言ってる。

潤が優しいからって調子乗ってるよな。」



さっきまであんなにキツく俺を抱きしめていたのに、ガバッと俺から離れて項垂れる翔くんが愛しくてたまらない。



「余計な事?」



今度は俺から翔くんを抱きしめて

その唇をついばんだ。



「ちょ、・・・潤?」



俺からの繰り返されるキスに

遠慮がちだった翔くんも段々

深く応えてくれるから



「余計なんかじゃないよ。彼女出来たって言うからどれだけ落ち込んだ事か。俺も翔くんが大好きだよ。友達じゃなく僕の恋人になってよ。」



やっと自分の本心を口に出来た。



それを聞いた翔くんから返事代わりかのように

途端に激しく、熱く交わされる口付けを

甘い気持ちで受けながら




やっぱりうちの姉ちゃん、恋愛マスターだったなって、そんなどうでもいい事が頭に浮かんだ。






Snowflake




おわり