個人の部 初めてかけた 銅メダル(第21回おろちゃんマラソン完走記2) | 神社仏閣旅歩き そして時には食べ歩き

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還暦を過ぎて体にトラブルが出始めて、ランニングを楽しめなくなりました。近ごろはウォーキングに軸足を移して道内の神社仏閣を巡り、御朱印を拝受したり霊場巡礼を楽しんでいます。いつかは四国八十八ヶ所巡礼や熊野詣をすることが夢です。by おがまん@小笠原章仁

2.向かい風に苦しむ


 「5秒前、4、3、2、1・・・バン」 ピストルの音と共に一斉にスタートしました。最前列から白ゼッケンの10km出場者が飛び出していきます。私はスタートダッシュに慣れていないため、いきなり出遅れてしまいます(笑)。


Road to SAROMAN BLUE-スタート

 一斉に駆けていくランナーたち。その中には、200番台のナンバーをつけている同じカテゴリーのランナーも何人かいます。


 アップをしているときも、同じ200番台のランナーが気になりました。


 中にはランシャツ・ランパン姿が板につき、いかにも「速いぞオーラ」を出しているランナーがいます。


 かなりの年配ながら、かなり走り込んでいる感じの黒ずくめのランナーもいます。


 他にもさきほど話をした留萌走ろう会のYさんもサブフォーランナーですし、ランシャツ・ランパンが板についているランナーは他にもいます。みんな速そうに見えて、その中の3名に先着できるのか、自信がありません。


 そんなランナーの中から、「速いぞオーラ」を出していた岩見沢のIさんが飛び出していきます。続いて200番台の選手を探すと、札幌から参加のSさん、留萌走ろう会のYさんらが見えます。ということは、4番手につけたのでしょうか?でも数百m走ったところで、もう一人のランナーに抜かれてしまいます。年代別では5番手というところでしょうか。この位置をキープできれば入賞圏内ですが、まだまだスタートしたばかり。今から順位を守ることを考えるのは早すぎます。


 コースはスタートして200mほどで右折し、それから300mほどで左折します。あとは途中で緩いカーブもありますが、田園地帯を道なりに延々と走って折り返してきます。交差点を2つ曲がり長い直線に入る頃には、後ろからスタートしてきた6kmや4kmの選手も私の前に出てきて、周りは賑やかになります。そんな中でも、私は2人の200番台の選手の背中を見ながら走りました。


 思った通りの向かい風ですが、日頃の練習でも風の中を走ることも多いおかげで、以前ほどには風は苦にならなくなりました。でももちろん、走りやすいものではありません。


 4kmを走るのは小学校高学年の選手たちです。スピードに乗って私を抜いていく子供たちも何人もいます。ただ走り慣れていないせいでしょう、ペースも安定せず、コース取りも不安定です。抜いて前に入り急減速をしたり、後方から接近しているのに気づかず急にコース変更をしてきたり。


 一斉スタートのローカル大会ではよくありがちな状況です。そのことを覚悟して、予測しながら走らなければなりません。ちょっと気を遣う瞬間です。


 やがて2kmコースの折り返し点を通過しました。この大会、距離表示はありませんが、スタート・ゴールが同じ地点で、往路も復路も全く同じコースです。ということは、2kmの折り返し地点は1km地点ということです。慌てて時計を見ると、4分30秒くらいでした。4分30秒といえば、ちょうど45分のペースです。よし、このペースをキープして走ろう。そう思いました。


 200番台のナンバーをつけた1位、2位のランナーの姿はほとんど見えません。でも3位、4位のランナーは見えています。特に4位のランナーは少しずつ近づいているような気がします。このまま前のランナーを目標に追いかけていけば、後ろからくる選手に対しても差を保ちながら行けるでしょう。そう思いながら背中を追いかけました。


 そのうち4位のランナーを捉えました。代わって年代別4位に上がります。次のターゲットは3位を走るYさんです。その背中を追いかけ始めます。


 4kmコースの折り返し、すなわち2km地点を通過するときに時計を確認すると、9分10秒くらいをさしていました。少しペースが落ちています。でも体感的には落ちているようにも思えません。きっと向かい風と緩い上りのせいでしょう。


 ここで小学生はみな折り返していきます。前を走るのは10kmと6kmの選手だけとなりました。元気な足音が後ろから近づいてくるたびに、それはもしかしたら同じカテゴリーの選手かということが気になります。でも私を抜いていくその選手は6kmのナンバーカードをつけており、ホッとします。


 前を行くYさんとの差はなかなか詰まりません。でも開いているわけではありません。今はまだ勝負をかけるときではない。こうして背中を見ながら走っていれば、後半にきっとチャンスは訪れるはずです。今は焦らず自分のペースを守ります。その結果この差を守っていられれば、後半どこかの時点でGOサインを出し、勝負を挑むこともできるでしょう。


 やがて6kmの折り返し地点にやってきました。6kmの参加選手は、みな折り返していきます。後続の足音もどんどん折り返していきます。でも、その中でひとつだけ後ろからついてくる足音があります。間違いなく、10kmの参加者です。問題は200番台のナンバーカードをつけているかどうか・・・。しかし振り返って確認をしたりはしません。後ろにとらわれることなく、前だけを見て自分の走りをするだけです。後ろを気にするそぶりを見せるということは、後続のランナーに対して自分の弱みを見せることにもなりますから。


 6km折り返し、すなわち3km地点の通過タイムは13分くらいでした。ここは4分50秒かかっています。ペースは徐々に落ちています。でも体感的にはそれほど落ちたという感じはしません。Yさんとの差も開いてはいま・・・ちょっと開いたかな?どこか目印でタイム差を計測しようかとも思いましたが、それはやめました。前との間隔、順位を気にするのは折り返してからで十分です。往路はとにかく自分の走りをするだけです。往路で無理をしてしまうと、たとえ10kmといえども最後まで持ちません。勝つにせよ負けるにせよ、勝負は最後の最後までもつれそうだ。そんな予感がありました。


 もう10kmの折り返し、すなわち5km地点まで、距離がわかる表示はありません。ペースを考えることなく、視線をやや前に落として走ります。ときおり視線をあげると、Yさんの背中がほぼ変わらない距離で見え、ホッと安心します。その一方でつかず離れずついてくる足音がとても気にかかります。


 足音の主は2km付近で抜いてきたランナーでしょうか。だとしたら、同じカテゴリーですから、これが4位争いとなります。私のペースは徐々に落ちているようですから、いったんは抜いて離しにかかったものの、また追いつかれてきたのかもしれません。前も後ろも気にかけながら、ひたすら折り返し点を目指します。


 やがて折り返してきた先頭のランナーが見えてきます。先導車に続く先頭集団の中には、あの「速いぞオーラ」を見せていたIさんも含まれています。思った通り、私とはレベルの違うランナーでした。


 続々と選手たちがやってきます。その中には200番台のナンバーカードをつけたSさんもいます。ここともかなりの差がついてしまいました。もう2位には届きそうにありません。でもその後のランナーには、200番台のランナーはいませんでした。間違いありません。Yさんが3位。そして私が4位です。


 Yさんが折り返し点を回り、私はそのタイムをチェックしました。ちょうど23分です。そしてYさんに遅れること11秒で、私も折り返し点を回りました。


 折り返した途端、風の抵抗がなくなります。そして緩い下り坂になったからでしょうか、体が前に進むようになります。


 「よし、後半は楽に進める!」


 でも本当の苦しさは後半に待っているということを、この時の私は知りませんでした。(つづく)