(6)大詰めへ
これが全力で走る最後の周回です。そう思ってスタートしました。とはいえ、最初からかっとばすと最後までもちませんので、1周することを考えて抑えてのスタートです。にも関わらず、足も体も悲鳴を上げそうな状態です。
アリーナを抜けて5度目のトンネルを目指します。何度走っても慣れることのない、何度走っても攻略法のわからないトンネルです。ともかく歩くことだけは避けようと、ゆっくりゆっくり足を前に運びます。
トンネルを抜けたときは、いつもと同様に消耗しています。でもあとはなんとかだましだまし進みます。ともかくロスの少ない走りを心がけ、足を上ではなく前に伸ばします。推進力を上に逃がさないようにということだけを意識します。あとは余計な力を使わないように、ゆっくり確実に走ります。
1周2キロの短いコースですからエイドは使う必要ありません……と言いたいところですが、呼吸を整えるためにしっかり給水します。
残りは1キロあまりです。本来であればしっかりと意識して笑顔を作って走りたいところですが、そんな心の余裕はまったくありません。最後まできちんと走れるかどうか、それすらも不安で必死の走りとなっています。そんなところ、撮らなくていいから(笑)。
スタート直後の上りのトンネルは何度走っても走り方がわかりません。あとはもう体を軽量化するよりほかにはないのでしょう。でもこのコース後半の下りの走り方は、周回を重ねるたびに慣れてきました。
下りの難しいところは、勢いに任せて突っ走っちゃうとオーバーペースになります。しかし逆に抑えすぎるとブレーキをかけるような形になります。そうすると体重が何倍もの力となってまともに足にかかってしまい、足への負担が大きくなります。そこの加減が非常に難しいのです。
1周目はノーブレーキで駆け下りてしまいオーバーペースに苦しみました。でも2周目以降は、徐々に上手にブレーキをかけられるようになってきました。しかしこれとて、もっと効果的な方法は減量なのでしょうね。
オーバーペースにならず抑えすぎず、足への負担を最小限にとどめて駆け下りました。あとはひたすらアリーナを目指すのみです。
その後も無事に走りきって、ぷーさんにたすきを渡しました。今の精一杯の走りをしたのだから、10分を切れたかな?と思ったのですが、結果は10分17秒です。でもまあ、この状態で5分そこそこのペースで走れたのですから、上出来ということにしておきましょう。
これでちょうど30周を終えました。時間は5時間11分55秒です。ここまで平均すると1周を10分あまりで走っています。残りは48分05秒ですから、このペースだとあと4周です。10分を切るペースで繋がっていけば35周も可能になりますが……みんな無理にペースを上げないよう、心の中で祈っていました。
この1周を走り終えると会場を後にするというぷーさんは、最後の周回を8分台でカバーしました。タイムは5時間20分53秒です。私はちょっとドキドキし始めました。
フリージアさんから最後のたすきを渡されるとき、そのタイムが5時間50分台ならば最悪です(笑)。全力で9分台を目指して走らなければなりません。しかし51分を超えてくれればもう安心です(笑)。今の私は絶好調だとしても8分台では走れませんから。
やがてさちこさんが戻ってきて32周目終了です。タイムは5時間32分17秒です。残り30分を切っています。これなら大丈夫。5時間50分台で私にたすきが繋がる可能性はかなり低くなりました。全力で走らなきゃならないという事態は避けられそうです。そう思いつつ、ドキドキは止まりません。
山の河童さんがアリーナに姿を現した時、5時間41分台でした。フリージアさんはここまで1周11分くらいで走っています。ということは5時間52分台で私が走り出すことになるでしょうか。私が全盛期に全力で走ったとしても、8分を切るのは不可能です。予定通り、最後の1周はダウンジョグをできそうです。
場内の時計を見ながらフリージアさんを待ちます。5時間50分……51分……。予想通り、5時間52分台でフリージアさんが現れました。私はフリージアさんからのタスキを受け取りました。(つづく)
(1)今年も6時間
(2)練習不足を実感する
(3)カメランからビーランへ
(4)アクシデント
(5)苦しむ終盤
(7)飲むために走るへ
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