脚を長く見せたい、おしゃれをしたい。そんな時にヒールを履くことがあるでしょう。ヒールを履くと”かかとの位置が高くなる”だけではなく、様々な影響が身体には加わります。

 

この図の左側は裸足で床に立っている状態。足関節のところが床と垂直となっています。真ん中の図は、もし身体が裸足と同じ状態で5cmのヒールを履いたとしたら、の図。5cmのヒールは足関節では20度上がった状態になるので、全身が20度前へと傾きます。しかし、身体はこのように前に傾いたままではいられないのでなんとかして床に対して垂直な状態へと適応しようとしたのが右の図です。膝が曲がって腰が反っているのが見えます。

 

このように、ヒールを履くと爪先立ちのような状態を保つことになります。足の下にはヒールの支えがあったとしても、股関節や体幹周りの筋力が弱く良い姿勢を保てない場合は、先の例のように骨盤を前へ倒して反り腰でアヒルのような格好になってしまったり、骨盤を後ろへ傾けて猫背になってしまったりしてしまいます。

 

(図はプロメテウスより)

 

また、足関節の構造的にもヒールは不利な状況にあります。足首を起こした状態(=背屈)では足が左右に動きにくいのに対し、つま先を伸ばした状態(=底屈、ヒールを履いたような状態)では足が左右に動く量が増えます。これは、足首の骨である距骨(きょこつ)が前側と後ろ側で幅が違うために、底屈位では関節の遊びが大きくなるからです。ヒールの靴で歩くということは、常に足関節での遊びが大きい状態で歩くということになり、足関節を支えるための筋力も必要となります。

 

 

そして、8cm(3インチ)ほどのヒールを履くと、体重の9割がつま先側にかかるというデータもあるようです。ヒールの位置や足よりも上の姿勢によってこの割合は変化するでしょうが、フラットな靴であればかかと側とつま先側で支えられる体重が、随分と前へとシフトするのはイメージできるでしょう。つま先の付け根の部分にタコができたり、足のアーチが落ちてしまうのも、ヒールを履いている人で多く見かけます。外反母趾もヒールに関連して起こる場合があります。そして常に爪先立ちの状態なので、ふくらはぎの筋肉は伸ばされる機会がなく、短く硬くなってしまいます。

 

ヒールを楽しみたいのであれば、足のケアをしっかり行いましょう。そして、股関節や体幹周りのトレーニングも忘れずに。ヒールを履くなら美しい姿勢で颯爽と歩きましょう。

 

<参考文献・図の引用>

Why Shoes Make “Normal” Gait Impossible 

by William A. Rossi, D.P.M.