自称グルメ(だった)私はよくその手の雑誌を見てはおいしそうな店に出かけるのを趣味にしていた。「食べ歩き」というヤツである。ところが、雑誌の能書きを信じて出かけてみても、また行きたくなるほどの店は10軒に1軒もない。

 「ハナコ」を見て吉祥寺の絶品チャーハンを食べさせるという店に出かけた。(一体どんな味なのだろう・・)と期待に胸を膨らませ、おなかを空かせて足を運んだのに、ごはんのダマはあるし、何のことはない、自分で作る方がよっぽどマシだったのだ。それまでにも散々だまされて来たが、この時には(もー、許せない!)と、グルメ雑誌は一切買わなくなった。

 京都などに行くとガイドブックに出ていないところでも結構美味しい店があるのに、東京というところは実にまずい店が堂々と営業している。新宿のあるビルの地下の有機野菜の店、というのに入ったら百グラム70円くらいの牛のくず肉を炒め、安いサニーレタスを山と盛って千円もとる。かと思うと恵比寿の某蕎麦屋のカツ丼は、肉がロースでなく薄っぺらいバラ肉を重ねて揚げたもの。しかも古い油で揚げているのでまずいの何の。とても食べられた代物ではなかった。

 子供の頃は外食するとはプロの味が楽しめるという事だった。今は(どうかまずい物だけは出ませんように)と祈るような気持ちで暖簾をくぐる。

 という訳で最近はまずくて高い、しかもタバコの煙が漂うというので外食はほとんどしない。もっぱら自宅でカンタンな物しか作らないがこの間、家庭栽培のニラをもらったので数年ぶりに餃子を作った。そんじょそこらの餃子よりはるかに美味しい。

 結構料理はうまいのだが、実は大の料理ぎらい。材料を切ったり茹でたり焼いたりして食べた後は皿洗い。こういう一連の単純な反復作業が実に面倒くさいし空しい。男の友人が来て何かを作るのはもっとシンドイ。かつては乏しい家計をやりくりして愛する男の為に精一杯料理した時期もあるが(笑)、感謝もされず、結局は飯炊き女としていいように利用されただけとあっては、もう男のためにけなげに料理するなど考えられない。彼らにこそ料理して食べさせてもらいたいものだ。