僕はときどき、マジックの先生になったりするけども、それは、早く若い世代が育って欲しいからです。

自分が通ってきた道が、近道だったとは思えないので、自分の知る限りの近道を若い世代に教えようと考えてはいます。

しかし、それは、コツを教えるという意味ではありません。

ときどき、「マジックのコツってなんですか?」という質問を受けることがありますが、一般の方なら仕方ないにしろ、マジックを少しでもかじっている人にこれを言われるとガッカリします。

コツなんてものは、その本人が気がついて初めてコツなのです。教えられたコツが有効である方が稀なんです。ですから、僕が教えることは、自分が知る限りの正解であって、コツではありません。

ディズニーランドが楽しいのは、ミッキーマウスが居るからだけではなくて、細部まで気遣いが行き届いているからです。行く度に「こんなところまで気を遣っているのか!」という驚きが、エンターテインだと思います。

コツではディズニーランドはできません。コツではあんなに全ての人が笑顔でいられるはずはありません。

マジックもそうじゃないかと思います。細部まで気を遣っているか、全ての動き、セリフに理由があるかどうかで、その人のショウ全体の印象やキャラクタが決まるのだと思います。

全体は細部で創られる。

当たり前のようで忘れがちなことですが、僕はそう信じています。