(当時この記事はアメンバーにてアップしていました。
時間が経ったのと、ある方に読んでいただきたいため、普通の記事にします)


知人の小学校6年生のお嬢さんに、彼氏が出来たそうです。
その話をもとに、物語が出来ました。
お時間のある時にどうぞ読んでいただけると嬉しいです。m(_ _)m


(ここからです)
淑子は今日もそおっと娘のみさきのDSを覗き込む。

小学6年生のみさきが、ゲームをするフリをして彼氏の隆生(りゅうせい)とDSのメッセージ機能でやり取りをする様子を、娘のDSの画面を後ろから覗き込むのが習慣になってしまっている。

つい数日前に、何気なく覗いたらとても小学生とは思えない衝撃的なやり取りを見てしまった。

そういえば一学期の終わり頃、頬を薄く赤らめた娘が「隆生君から『つき合ってくれ』って言われたの。」
って言っていたのだ。
その時は、「まだ小学生だから」と気にしていなかったのだが。
画面に一瞬だけ見えた文字。
「俺だけをずっと好きでいてくれ」
それに対する娘の答え
「大丈夫」
「いつも言ってるでしょう?」

淑子は軽く目眩がした。

もっと驚いたのが
「抱きしめたい」
とだけ見えた、娘の彼氏の言葉。

これに対する娘の答えは見えなかったのだが・・・いや、怖くて見たくない。
ああ、でも、なんて答えたのかしら?!
気になる。。。

娘と彼氏のお付き合いは今年、いやもう去年の四月、6年生になったばかりの頃かららしい。
普段はそんな話はしない娘が淑子が根掘り葉堀り聞いたら、馴れ初めから最近あった事まで、喋り出したら止まらなくなってしまった。

隆生とみさきは、3年生の時に同じクラスになった。

隆生は顔はまあ・・・すっごく整っているわけではないが、他の男子にはない品の良さと、優しげな雰囲気の漂っている男の子だった。
実際彼は男子にも女子にもお年寄りから子供、犬、猫、鳥、蛇、とにかく誰にでもすごく優しかった。
怪我を負って道にうずくまっていた子猫を隆生がそおっと連れて帰って行ったのも、みさきは見ていた。

当然、そんな男の子はたちまち女子に大人気となり、後で聞いたらクラスの女子生徒の半分は隆生の事が好きだったという。
みさきはそんな沢山いる女子の中の一人に過ぎなかった。
でも、4年生、5年生と隆生とは別々のクラスになって接点が減っても隆生の事が頭から離れることはなかった。

そして・・・

6年生になって、再び同じクラスになって、みさきの想いはますます募るばかり。。。

とうとう意を決して4月の終わり頃、隆生にそれまでの想いを綴った手紙を渡した。

みさきは一人で、隆生の家に向かった。
ドキドキしながら家のインターホンを鳴らす。
「はい」
隆生が出て来た。
「隆生君!
これ!受け取って下さい‼︎」

そう行って手紙を渡すと、ものすごいスピードで走り去って行った。

「みさきちゃーん‼︎」
後ろから隆生が追いかけてきた。

「何やってんだよ〜。一人で走って行くなんて危ないじゃん。」

「とりあえず、家まで送って行くよ。」

二人は黙々と歩いた。

そしてみさきの家の玄関の前に着き、
「じゃあ」と隆生が言った。みさきは「じゃあ」と返すだけで精一杯だった。


隆生から返事があったのは、それから一週間後だった。

みさきはトイレには友達を連れ立ったりしないで一人で行く。
この時もそうだった。

教室を出て一人で歩いているところを、隆生に呼び止められた。
そして無言でポケットに押し込まれたメモに一言だけ書いてあった言葉。

「俺と付き合ってくれませんか?」

メモを押し込んだあと、隆生は足早にその場を去った。
その背中に向かって、

「隆生君!
はい!」

と、大きな声で叫んだ。
振り返った彼の頬が、赤く染まっていたように見えたのは、みさきの気のせいではなかったであろう。
トイレの前の告白。
あんまりロマンチックではないが、三年越しの想いが実った瞬間だった。


晴れてカップルとなったみさきと隆生だが、やはりそこは小学生、自由に二人で遊びに行ったりも出来ないし、電話を使う事すら親の許可がいるため、そうそう愛を深める事はままならなかった。
二人はお互いを想いながらも、友達数人を交えて遊びに行ったり、学校からの帰りにもやはりみさきと仲の良い女友達を連れて一緒に帰ったりしていた。
カップル成立後も、一部の仲の良い友人には話してあったが、相変わらずモテモテの隆生には他の女子からの猛アピールが続いていた。

「恋人繋ぎって、どうやるか知ってる?」
クラスの女王様的存在の美空(みく)が突然、みさきの目の前で隆生の手を握ってきた事もあった。

隆生はすぐに美空の手を離し、「うわー!美空、手がベットベトー‼︎」と言って逃げた。

自分にはそんなことがあった隆生なのに・・・

みさきもまた男女関係なく仲良くする女の子だった。
隣の席の翠(すい 男)と楽しく話していた時、後ろで見ていた隆生が突然、「みさきは俺と話している時より、翠と話している時の方が楽しそう。。。」と泣き出した。
翠は4、5、6とみさきと同じクラスで、色々と気が合う友達。
それを見た隆生が焼きもちを焼いて泣き出したのだ。

なだめるのに随分時間がかかった。
「私には隆生君だけだよ」

クラス全員の前でそう言った時、隆生に屈託のない、天使のような笑顔が戻った。

恋人繋ぎをしてきた美空も、さすがにそのあとは大人しくなった。

そして・・・


それから、15年後。
淑子は沢山の荷物を持って、家を出て行く娘を見送っていた。
「ずっと俺を好きでいて」
ゲーム機のメッセージ機能で娘にそう言っていた少年が、もう27歳になり娘を迎えに来たのだ。
夫と共に、二人を見送る。


数日後。
みさきは新居となったマンションの一室で、15歳になった黒猫、「クロ」の頭をそおっと撫でていた。

クロは、15年前、怪我をして道にうずくまっていたところを隆生が連れて帰った子猫だった。
結婚して家を出る際、「クロも連れて行きたい」と言ったら、母は少し寂しそうだったが。。。
怪我をしたクロを動物病院に預けて集中治療を受けさせていた時、隆生は毎日学校から帰ったらクロのところに通っていた。
「俺が面倒を見る」と言った言葉の通り、餌や水やり、猫トイレの掃除までも率先して行い、そしてそれを15年続けていた隆生に、母は快く引き渡した。


ゴーロゴーロゴーロ・・・
猫特有の喉を鳴らす音。
と、そこへ
「みさき〜」
「俺も撫でて〜♡」
隆生が猫のように擦り寄って来た。

「みさき〜♡」

ぎゅうう♡
みさきを抱きしめる隆生。

「ちょっと〜‼︎
クロが逃げちゃうじゃないの〜!」

優しく頬を撫でられる。

「やだもう・・・んっ!」

彼の顔が近付いて来た。

んんっ!
ぶっちゅう〜♡

みさきの柔らかい半球の先端が、尖っていくのを隆生は見逃さなかった。

「みさき?」

「やっぱりなぁ〜。みさきは敏感なんだからぁ〜。
初めてハグした時からこうだもんな〜。
小6の時からこんなだなんて、みさきってばエッチ♡」

みさきの母・淑子は知らない。
あの小6の時にみさきが彼氏から貰ったメッセージ、「抱きしめたい」の答えを。

娘はしっかり抱きしめられていたのである。小6で。


クロは何かを齧っていた。

二人が近付いてみると・・・

「あっ!」

二人は同時に声を上げた。
そこには見覚えのある、ピンクの花柄の封筒。

そこには・・・

「私は3年生の時からずっと、隆生君のことが好きです。」

15年前、隆生への想いを伝えようとしたみさきが、考えて考えて、たった一言だけ出てきた言葉が綴られていた。

にゃ〜〜ん♡

仲の良い二人の門出を、老猫も祝っているようであった。

終わり。



小学校の時の話は、ほぼ知人の話のままです。
今時の小学生って・・・「ずっと俺だけを好きでいて」
とか
「抱きしめたい」とか、言うんですね。。。

そのあとのは、どうせお話として書くならハッピーエンドがいい、という私の願望です。

それと、知人のお嬢さんが書いたお手紙の内容までは知りませんが、やはりシンプルにストレートに、「好きです」って言うのが、一番心に響くかなぁ・・・と、これもあくまでも私の個人的な考えです。

ちょっと大人の表現も挟みましたが、淑子は「抱きしめたい」と言った隆生の言葉の行方を知りません。
多分、こんな事になっていたのではないかなぁ・・・?とわたくしは存じます^^


ここまで長々とお付き合い、ありがとうございましたm(_ _)m