排卵誘発が子宮内膜に与える影響 | NPO法人 umi ~卵子の老化を考える会~

ウィメンズクリニック大泉学園ニュースペーパーより


子宮内膜は卵巣で作られるエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の共同作用によって調整されています。体外受精の為に排卵誘発をかけると、自然の排卵に比べて、これらのホルモンがたくさん作られることになります。それによって子宮内膜の形態が影響をうけて、子宮内膜の胚の受け入れに影響が出てきます。

更に排卵誘発をかけると子宮内膜で、ある種の接着因子が少なくなってしまうようです。また、新鮮胚よりも凍結融解胚の移植の方が妊娠率は高いことが明らかになっています。これは、排卵誘発によって子宮内膜の胚の受け入れが障害されてしまうことを示唆しています。


子宮内膜の胚の受け入れは妊娠成立におけるボトルネックになっています。基礎的あるいは臨床的な研究が胚の着床に向けて子宮内膜がどんな準備をするのかを理解するのを助けてくれます。マイクロアレイ法という技術は遺伝子の発現を網羅的に調べて大事な遺伝子を調べて、それを臨床に応用することにより女性不妊の治療を改善する助けになると思われます。



そのような基礎研究から、現在どのような治療法が考えられているのでしょうか?


マウスの研究では、胚の培養液の中にhepar anase を加えると着床率が上がることが報告されています。

hepar anase は胚が子宮内膜に接着、挿入し、血管を新しく作る役割があるようです。ラットではnitricoxideはgelatinase A(matrix metal loproteinase2)を誘導して子宮内膜に働き胚の着床を助けると報告されました。


ヒトでは、子宮内膜を局所的に傷つけてあげる(子宮内膜をブラシでこすったり、小さな匙のような器具で引っ掻くようなイメージです)と着床しやすくなることが昔から言われています。傷ついた子宮内膜が修復する過程において成長因子などが分泌されるなど着床に有益な物質が産生されるためだと考えられます。顆粒球刺激因子(GCSF;grenulocyte-stimulating factor)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG;human chorionicgonadotropin)、を胚移植の前に子宮内に注入してあげると着床しやすくなることが報告されるようになりました。あるいは、piroxicanを移植前に内服すると子宮の収縮が抑えられることと、血流が良くなって着床しやすくなると報告しています。着床の時期に子宮内膜がどうしても厚くならない方に顆粒球刺激因子(GCSF)を子宮内注入すると子宮内膜が厚くなることが報告されています。このように子宮の形態的な異常だけでなく、遺伝子レベルの研究から新しい治療法が提唱されるようになってきました。


いずれにしても、着床の過程に問題があって妊娠しにくい方がいて、その原因が少しずつ分かってきました。その治療方法も開発されてきています。