衿野未矢のルポ作品はなかなか興味深いものが多い。
現代人の心の闇に迫る題材が多いにも関わらず、不快感がない文章だからだろう。
メンヘル系をテーマにしたものが多い(主に依存症)が、読み終えて暗い気持ちにならない。そういう人たちがいて、その事実を垣間見た、ということが残るだけなのだ。
中には暗く塞ぎこみたくなるような生々しすぎる文章で構成されたルポもあるが、衿野未矢は読みやすくわかりやすいライターだ。

この『依存症の男と女たち』は、題名のとおり何に依存して生きている男女を扱った作品だ。
今までの作品と違うのは、依存症は男性で、そういった状態に陥る男性の陰には女性の存在がある、ということを軸にした例ばかりを集めている点だ。
これまでも買い物依存症や恋愛依存症の女性を扱った作品をいくつか出しているが、今回は新しい切り口である。

借金、不倫、自傷、セックス、暴力・・・依存の対象は様々だが、依存症の人間はもちろん一人で生きている訳ではなく、誰かと関わり誰かに支えられ生きている。
そこにも依存症になってしまう原因、依存症から抜け出せない訳が存在することを説いている。

かなり面白く、一気に読み進めた。
女性は何かに依存することが多い気がする。恋愛然り、ダイエット然り、買い物然り・・・が、男性も同様なのだ。
依存する対象は、やはり女性とは相違があるものの、男性も依存症になるのだということを改めて感じ、自分の周りを意識した。
もしかしたら、隣の人は何かに依存し、迷路にはまっているのかもしれない。
それくらい依存症は身近な病なのだと思った。
具体例を知るのと知らないのでは大きな差がある。
一度、依存症ってこんな感じなのかというのを知ってみるのもいいと思う。決して他人事ではないと感じるだろう。

<講談社文庫 2004年>

著者: 衿野 未矢
タイトル: 依存症の男と女たち