胸に迫るせつなさを与えてくれる恋愛小説。

主人公、優美は「他に好きな人ができた」という年下の恋人・雪道の告白で、二年にわたる同棲生活が終わろうとしている。彼が出ていく日まであと1ヶ月となってしまった・・・

「もしもいつか私以外の誰かを好きになったなら、そのときは、一番最初に私に言ってね」というのが、優美と雪道との最初の約束だった。
雪道は困ったような顔ではじまったばかりなのに終わる時の約束をするなんて変だという。
そして、誰のことも好きになることなんてないと言う・・・

この世に永遠は存在しない。
恋にも命にも、何にでも、終わりはあるのだ。
わかっていても、それを目の当たりにして暮らしていくのは容易なことではない。
終わるという事実を受け入れる、その行為の過程を丁寧に描いている。

彼が好きになった人を想像する優美。
恋の儚さを想う優美。
こんなに好きになった人が彼でよかったと想う優美。
そして、八月の空に雪が降るような奇跡が起きないかと祈る優美。

せつなくてせつなくて、でも心が温まる物語。
ただ、本当にせつないので胸の痛みに耐えられない状態の時は読まない方がベター。

<幻冬舎文庫 1999年>

著者: 狗飼 恭子
タイトル: 雪を待つ八月