一時期、乃南アサにはまり発売されている文庫を次々購入し読み漁った時期があった。
その中で印象に残った作品がこの『団欒』だ。

学校経営者の娘と結婚し、逆玉と言われる立場に立った男。婿養子となり妻の両親と同居することになるが、その家族の生活は男の想像を絶する光景ばかり。妻たち家族の奇妙な絆を訝しげに見つめていた男。或る日我慢が出来ず爆発してしまう。しかし妻たち家族は男の爆発程度に驚きたじろぐような人たちではなかった・・・
そんな世界を描いた『ママは何でも知っている』他、家主である男を除いた家族達が次々に生活を独自のルールで縛り生活が奇妙に歪んでいく『ルール』など、家族を軸にした本当のような嘘のような寒気のする物語が続く。

家族の絆、家庭ごとの決まりごと・・・他人には理解できない〝家族〟という社会を乃南アサ流に描く。
この本の題材は、そこらにありそうな家族団欒のワンシーンだ。
しかし、乃南アサのエッセンスを加えるだけで恐怖の非日常的な世界に変化する。
ドラマにありそうな要素の詰まった家族サスペンスは「世にも奇妙な物語」の世界。
そんな怪しい家族たちの世界を5つ収録した短編集。
さくっと読めるサスペンスとしておすすめする。

<新潮文庫 1998年>

著者: 乃南 アサ
タイトル: 団欒