藤堂志津子は短編が結構多く、通勤時に読みやすかったこともあり殆どの文庫を読んだと言ってもいいだろう。
書棚の整理をしたら山のように出てきたので読み返しているので、今日は3冊続けて紹介している。
本書はほろ苦い大人の恋愛を描いた4話から成る短編集だ。

表題作『昔の恋人』は小さな編集プロダクションで制作チーフに就いている37歳・独身の織美が主人公。
1日の仕事を終えると疲労困憊のあまりデスクから動けずに居るのだが、社員からは「淋しい独り者だから会社で時間をつぶしている」と思われており、織美もそれを否定せず過ごしていた。
そんな或る日、十数年ぶりにかかってきた城岡達也からの電話。
この街を離れてから連絡の途絶えていた彼が久々にこちらに来るというので会いたいと言うのだ。
忘れていた若かりし日が脳裏に蘇り、困惑する織美。
再会が落としていったほろ苦い思い、そして現実。それらを見つめる織美のせつない心をうまくまとめている1作。

大人の女性の小さな恋心、甘く美しいだけではない想いの数々・・・ビターな物語集なので、大人の女性が恋を振り返りたい時にぴったりの1冊。

<集英社文庫 2002年>

著者: 藤堂 志津子
タイトル: 昔の恋人