そんなに親しかったっけ?と驚いてしまうくらいに、会うと自分のことを話してくる人、そんな女性が主人公の恋愛×コメディー要素の濃い短編集。

主人公・並河志津子は40歳を過ぎたシングルウーマン。
リサーチ会社で手腕を振るいながら沢山の恋と友人と知人と酒と美味しいモノに囲まれて暮らす。
志津子はお酒を飲むと自分のことを何でも話してしまう。
同情を買いたいとか、哀れまれたいとか、悲劇のヒロインぶりたいとか、そういった下心は無く、ただただ自分の悲恋やドジっぷりを喋ってしまうのだ。
そんな志津子の周りの人間が、客観的に志津子を観察し語る心の中を描く。

一番最後に収録されている『亭主、差し上げます』は志津子とは全く関係の無い物語だ。
20代後半のOL恵子と不倫相手の耕平、その妻光の物語。
恵子と耕平は恵子の部屋で月に1度の逢瀬を楽しんでいた。
するとチャイムが鳴り、上の階に住む者だと名乗る女性がやってくる。
扉を開けるとそれは耕平の妻だった。
愛人と正妻と弱い男。
3人のやり取りが続き、最後は女二人で悟っていく。
女は強い。
妻は強い。
そのことを改めて感じた1話。

じっとりした恋愛小説ではなく、さっぱり痛快な恋愛小説を求めている方におすすめの1冊。

<徳間書店 2004年>

著者: 平 安寿子
タイトル: なんにもうまくいかないわ