zoo 17歳でデビューした1978年生まれの若手作家の人気短編集である。ホラー作品ばかりが収録されており、映画化もされている。


『カザリとヨーコ』は双子の中学生の物語である。
二人は母親と3人で暮らしている。
ヨーコとカザリは全く同じ顔をしているのに、別人のように育てられた。
容姿も能力も親からの愛の与えられ方も全てが平等ではない。
カザリは美しく愛くるしい少女として育てられ、着飾り、母親からも愛されている。
ヨーコは薄汚く部屋も与えられず、食事もろくに取れないでいる。
本を読むこともテレビを見ることも自由にならない。
そんなヨーコには友達もおらず、学校でも「あのカザリさんのお姉さんなの?」と言われてしまう。
カザリは時々残飯をくれるし、時々優しい顔を見せてくれるのでヨーコはカザリを大切な妹だと思っている。
或る日、迷い犬のポスターを見つけたヨーコはたまたまその犬を見つけた。
飼い主に連絡をし、スズキさんと出会う。
暗い日常に登場したスズキさんに、ヨーコはハマっていく。
でも、そんな日々は続かない。
ヨーコに楽しくてウキウキする日々など続く訳がなかった。
足を引っ張る母親とカザリ。
全てを失って、ヨーコは今を変えようとチャンスを掴み実行する。


その他、恋人の腐乱死体写真を連日届けられて憤る謎の男を描く『ZOO』、姉と誘拐されて閉じ込められた部屋の秘密を知ってしまった弟たちの7日を描く『SEVEN ROOMS』など、ホラー短編が10作収録されていて読み応えはある。
久々にホラー作品を読んだが、本当に気持ち悪くって読むのが嫌になるような文章もあるが、物語の流れに飲み込まれて読むのを止めることが出来なかった。
面白いということである。
グロテスクで気分を害する表現があっても、その先が気になってしまうなんで凄いと思う。
夏が近付いてきてホラーを小説で味わいたい方にはおすすめの1冊。


<集英社 2003年>


著者: 乙一
タイトル: ZOO