honeymoon 幼なじみの二人が共に大人になり、共に暮らしていく流れは極自然なことだった。
そして二人がハネムーンに出ることも。
緩やかな時間の中で、二人が孤独と思いやりに満ちた愛を育てる姿を描く長編作品。


まなかと裕志は幼なじみだ。
隣同士の家に住み、垣根を越えてお互い行き来する生活を長く続けていた。
18歳の時、急いで結婚した。
しかし、愛し合っていてどうしようもないから結婚したというのではない。
まなかの籍に裕志が入らなければ、会ったことも無い裕志の父がやってきてアメリカに連れて行ってしまうかもしれない恐れがあったので、それを避ける為だった。
でも二人は愛し合っていなかった訳ではない。
幼い頃からの強い絆で結ばれていて、結婚は自然な流れとも言えた。
父と義母に育てられたまなかと、祖父に育てられた裕志。
二人の家庭環境は少し複雑で入り組んでいたけれど、二人はだからこそわかりあえたのかもしれなかった。
まなかの愛犬の死、裕志の祖父の死。
裕志は凄まじい喪失感に苛まれ、それを見守るまなかは辛くてしょうがない。
何かしてあげたいと思う。
そうやってまた、愛が育まれていく。
裕志の祖父の死を乗り越える為、リフレッシュする為に二人はまなかの実母が住むブリスベンを旅する。
二人にとって二度目のハネムーンだった。
幼く脆い愛から、一歩一歩進み固い絆を作り本当の愛へと変化していく。


同じ物を見ても、同じ気持ちになれるとは限らない。
最愛の人だから、何でも分かち合えるというものではない。
でも、時々全く同じ気持ちを感じ、ひとつの世界に二人で浸れる瞬間はあり、それはとても幸せなことなんだと感じた。


ブラブラしていても食うにも何も困らず結婚生活を営めるという主人公たちの設定は相変わらず非現実的で感情移入できないが、その他の大半の部分が生々しく、優しい言葉で表しているけれど人間の本質を突いていてとても現実的である。
なんだかとてつもなく切ない物語だった気がする。


<中央公論新社文庫 2000年>


著者: 吉本 ばなな
タイトル: ハネムーン (単行本)


著者: 吉本 ばなな
タイトル: ハネムーン (文庫本)